アレルギー、自己免疫疾患、自閉症の原因は体内の生態系にあった!

アレルギー、自己免疫疾患、自閉症などの原因についてです。

目次

寄生虫なき病

モイセズ・ベラスケス=マノフという科学ジャーナリストの書いた「寄生虫なき病 」という本を読みました。

内容的には前回の「抗生物質(抗生剤)の副作用とは?原因不明の病気は抗生剤のせい?」で取り上げたブレイザー博士の考えを詳細に調査したものという感じですが、エビデンスが多い分説得力があります。(その分読むのに時間を要しますが…)また、そのブレイザー博士の研究についても書かれています。

喘息や花粉症などの各種アレルギーや原因不明といわれている自己免疫疾患(1型糖尿病潰瘍性大腸炎クローン病多発性硬化症、シェーグレン症候群、乾癬、全身性エリテマトーデスなど)、自閉症などがなぜ起こるかについてや、癌(がん)、うつ病といったいわゆる現代病が「遺伝子と体内の生態系」に起因する可能性に言及した大変興味深い内容です。

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著者自身がアレルギーや自己免疫疾患に悩まされていた

著者のモイセズ・ベラスケス=マノフは自身が子供の頃から円形脱毛症や食物アレルギーに悩まされていました。

さらに円形脱毛症は全身の毛が抜け落ちる全身型脱毛症へと進行し、ほぼ無毛状態となっていました。

この脱毛症を治すためにステロイド治療や免疫刺激療法などを試したものの効果は無く、この病気が自己免疫によるものだということを2010年のゲノムワイド関連解析によりはっきり知ることになります。

そして長女が生まれたのをきっかけに、このようなアレルギーや自己免疫疾患から子供を守りたいという想いが強く芽生えます。

アレルギーや自己免疫疾患はなぜ起こるのか

ジャーナリストであるモイセズが辿りついた結論は、現代人を苦しめているアレルギー疾患と自己免疫疾患は、体内の警察機構の統制不足から起きていたというものです。

「警察機構」とは免疫系のことです。生後まもなく感染症やガンに対して働く自己免疫細胞が発達し、その自己免疫細胞を平和維持細胞が抑制して均衡状態が確立されますが、長期間にわたってこの平和を維持するためにはさらに抑制細胞が必要となります。

この抑制細胞は外界で特定の寄生虫や微生物に接触して初めて出現するそうです。つまり、「人体が外界からの刺激に依存している」ということになるのですが、この刺激が細菌やウイルスを含む寄生生物ということです。

免疫異常とは、本来無害な蛋白質(タンパク質)を攻撃するアレルギー、自分自身の組織を攻撃する自己免疫疾患、自分自身の腸内細菌を攻撃する炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などを指します。

寄生虫にわざと感染する

この免疫異常は体内の生態系が崩れたことが原因で起こると考えたモイセズは、同じ考えから寄生虫を販売するビジネスを立ち上げたアリエッティという人物を訪ねてメキシコを訪問します。

アリエッティはこのブログでも何度か紹介している藤田紘一郎先生の影響を受け、藤田先生を真似てサナダムシを感染させたものの、肛門から卵が出てくる不快感に耐えられなくなり、サナダムシを断念するという経験をしています。

ちなみに藤田先生はこの体長が7m以上にもおよぶサナダムシを体内に寄生させ、名前までつけていました。死ぬたびに新しいサナダムシを手に入れ3度共生したものの、現在は上下水道が整備されサナダムシが手に入らなくなったということもありやっていないようです。

藤田先生に関する記事
腸内環境を改善する食事 腸に良い食事 腸内細菌 腸内フローラについて
ピロリ菌は除菌しないほうがいい?検査方法や感染経路について

サナダムシを体内に寄生させることに挫折したアリエッティは、より心理抵抗の少ない寄生虫を探した結果、アメリカ鉤虫に白羽の矢を立てます。 アメリカ鉤虫

アメリカ鉤虫 Original Update by Jasper Lawrence

この本の表紙にも描かれているアメリカ鉤虫はとても小さく、最大でも1cmほどの寄生虫です。寄生させる幼虫は皮膚から侵入できるほど小さいもので、モイセズは包帯に染み込ませた30匹の幼虫を皮膚から体内へ取り込みます。

第1章で寄生虫に感染する記述があった後、第13章までモイセズが調査してきたアレルギー、自己免疫疾患と寄生生物に関する調査報告が記載されています。

全15章の第14章でモイセズの感染結果に関する記述があるのですが、2章から13章を読むうちに寄生虫療法が簡単ではないことが分かります。
(モイセズの結果については下記「寄生虫療法」に記載しています)

衛生仮説とは

この本のテーマとも言えるのが衛生仮説です。
衛生仮説とは清潔にし過ぎることで健康を損なう(特にアレルギー疾患)という説です。
この本を読めば衛生仮説が本当のことであると確信せざるを得ません。

細菌をばい菌や雑菌と忌嫌い、殺菌、除菌、抗菌などの意識が高くなるほど、感染症が少なくなることに反比例してアレルギーや自己免疫疾患等の現代病・文明病が増えていると言ってよでしょう。

アレルギー

1957年にイギリス人17,000人に対して行われた追跡調査によると、子供時代に大勢の年上の子供に囲まれて育った人ほど、青年期のアレルギー疾患のリスクが低かったということです。

兄弟の第一子は最もアレルギーを発症する確率が高く、兄弟が多い下の子供ほどアレルギーのリスクは下がります。

また、イタリアで疫学者が行った調査によると、空気感染する水疱瘡、ヘルペス、おたふく風邪、風疹、麻疹などのウイルスに感染してもアレルギーを予防する効果は無く、ネコに寄生するトキソプラズマ、A型肝炎ウイルス、ピロリ菌など糞口感染するものは抗アレルギー効果があるそうです。

抗アレルギー効果のある寄生生物に1種類だけ感染するよりも2種類以上に感染するとさらにその効果が高まります。

農場効果

農場や牧場などで働く人やその家の子供にはアレルギーの人がとても少ないそうです。これは家畜の糞や餌、肥料などに細菌などの微生物が非常に豊富にいることが原因です。

都会暮らしでも定期的にこのような場所を訪れて牛の乳搾りを行えば、花粉症や喘息になる確率を下げることができるとモイセズは言います。

農家の人が大量に花粉を吸い込んでも花粉症にならないのは、このような細菌がアレルギーを防いでくれるからです。

エンドトキシンとアレルギー

エンドトキシンとは細菌の細胞膜を構成する物質です。細菌が沢山いる場所では空気中のエンドトキシンの量も多くなります。

このエンドトキシンを沢山吸い込むとアレルギーのリスクを下げることができるそうです。またエンドトキシンに触れる時期は早いほど(年齢が若いほど)アレルギーへのリスクは低いということです。

エアコンを使用するとエンドトキシンの量は半分以下になってしまうという報告もあります。

動物実験では、まずエンドトキシンに曝露(ばくろ:細菌やウイルスにさらすこと)してから卵タンパクに曝露したラットはアレルギーを発症せず、先に卵タンパク、次ににエンドトキシンに曝露したラットはアレルギーの炎症が悪化しました。

これは幼年期に微生物に曝露することが重要であることを表し、すでに花粉症の人が牧場で働いても治らない可能性が高く、逆に症状が悪化する恐れもあるということになります。

母体の環境と子供のアレルギー

生まれつきのアレルギーというものは存在しないとのことです。
しかし生後1~2年でアトピー性皮膚炎になってしまう子供もいます。

そういう子供は成長すると共に食物アレルギーや喘息など次々とアレルギーを発症していくことが多いのですが、どうやらこれは母親の元々持っている体内生態系と妊娠中の母親の行動が大きく影響しているようです。

母親が妊娠中に動物と接触すると胎児の自然免疫は発達するそうです。
興味深いのは母親が何らかのアレルギーを持っていたとしても、妊娠中に農場などで動物の世話をすると子供はアレルギーを発症しないということです。

人工的に喘息を起こしやすくした妊娠中のマウスに牛舎に多くいる細菌を吸入させると生まれた子供は喘息を発症しませんでした。

また、ウガンダでは妊娠中の母親の寄生虫を駆除すると子供はアトピー性皮膚炎や喘息を起こしやすくなるという報告もあります。

これらは仮に自分のアレルギーは治せなかったとしても、生まれてくる子供のアレルギーを防ぐ為の大きなヒントになります。

花粉症メモ

花粉症は現代の医学に最初に登場した免疫異常だそうです。
1819年にある内科医が花粉症の症状を報告したそうですが、当時は太陽によって引き起こされると考えられていました。

それから50年経って原因が花粉であることが分かります。
さらに花粉を沢山吸っている農民に花粉症の人は少なく、富裕層や教育を受けた人のほうがかかりやすい、黒人よりも白人のほうがかかりやすい、イギリスやアメリカなど文明が進んだ国に多い、ということから、花粉症にかかるのは優れた人間であるというおかしな偏見もあったようです。

しかし、農業国より工業国に多くみられ、郊外よりも都市に多いという特徴は、やはり現代病であると言わざるを得ません。

喘息などの重いアレルギーや自己免疫疾患を寄生虫療法により治そうとして失敗した人の中にも、花粉症は治ったという例が多くみられることから、比較的軽い免疫異常であるといえそうです。

喘息メモ

乳幼児期に投与された抗生物質(抗生剤・抗菌薬)の量が多いほど、成長してから喘息を発症する確率は高くなるそうです。

ある研究者チームによると、生後1年以内に抗生物質を投与されると、喘息のリスクが50%高まるとのことです。

食物アレルギーメモ

ピーナツアレルギーを持つイギリスの子供を調査した結果、経皮曝露(けいひばくろ:皮膚から侵入するもの)とアレルギーの関連性が発見されました。

これはベビークリームの中にピーナツオイルが使われているものを使用すると、その後ピーナツアレルギーになるというものです。

食品のタンパク質に経口曝露(けいこうばくろ:口から摂取すること)する前に経皮曝露すると、かつて皮膚から侵入しようとした外敵に対する反応としてアレルギーが起こります。

要するに食べ物として摂取する前に皮膚にピーナツを塗ってしまったことで、食物アレルギーが起こるようになってしまったということです。これは、ピーナツが寄生虫扱いされているのと同じことのようです。先に食べ物として食べておけば問題無かったものを皮膚を通してしまったことが原因で起こる食物アレルギーです。

乳幼児にクリームや石鹸などを塗る前には成分に十分気をつける必要がありそうです。サイトを検索してみると、小麦由来の成分が入っ石鹸を使ったことで小麦アレルギーになったという情報もありました。

アトピー性皮膚炎メモ

「皮膚は体内の鏡」という小見出しでアトピー性皮膚炎のことが書かれています。

他のアレルギー疾患同様、都市部に多く、農村部には少ないとのことです。 農業に従事すること、殺菌されていない牛乳を飲むこと、保育所に通うことはアトピー性皮膚炎を予防する効果があります。

ドイツの調査ではピロリ菌がいると有病率が1/3に下がるという報告があります。 腸内細菌叢が多様性に欠けると乳幼児は発症する確率が高く、抗生物質を多様することも同様にリスクを増大させます。

母親は妊娠中に世話した家畜の数が多いほど子供がアトピー性皮膚炎を発症する確率は下がり、妊娠中に寄生虫を駆虫した母親の子供は駆虫しなかった母親の子供より発症率は上がります。

自己免疫疾患

自己免疫疾患の原因

イタリアのサルディーニャ島という所は世界でも一、二を争うほど自己免疫疾患の患者が多いそうです。特に多発性硬化症や1型糖尿病の有病率が高いとのことです。

この島では1950年頃までマラリアが蔓延していました。マラリアはマラリア原虫という寄生虫が蚊を媒介して人間に寄生することで起こる病気です。マラリアにはいくつか種類があり、重症化すると死亡することもある病気です。

1940年代の末頃から殺虫剤(DDT)の散布が行われ、数年でマラリアを撲滅することができました。ところがその十数年後、それまでみられなかった多発性硬化症を発症する人が現れます。

有病率はどんどん上がり、因果関係を研究した遺伝学者はマラリアの撲滅が多発性硬化症につながっているという結論を導き出します。

感染症を撲滅すると自己免疫疾患を発病する人が現れる

以上から、自己免疫疾患の原因の一つに「感染症の撲滅」があるといってよいでしょう。

サルディーニャ人は数千年の時を経てマラリアと共生するための遺伝子変異を起こしました。マラリアを抑える強い免疫機能は、マラリア原虫が寄生することで免疫を抑制されます。つまりこの遺伝子はマラリア原虫が体内にいることを前提として免疫をコントロールしていたのです。

こうして人間と寄生生物の共生関係が築かれていたわけですが、この遺伝子を持っていた人はマラリアが撲滅されたことで、免疫を抑制するものがなくなり自己免疫疾患を発症するに至ったと考えられます。

逆にいえば、自己免疫疾患を発症した人にマラリア原虫を寄生させれば病気を治せる可能性があるということになります。この点に着目した科学者がマウスに自己免疫疾患を発症させ、げっ歯類に感染するマラリア原虫を寄生させることで症状が著しく改善することを確認しています。

自己免疫疾患の人は感染症に強い

サルディーニャ人に起こった遺伝子変異は寄生虫のいない清潔な環境においては自己免疫疾患を起こすことが分かりました。逆に言えば、自己免疫疾患の人は感染症に強いということにもなります。

実際、全身性エリテマトーデスの患者はマラリアに感染しても重症化しないそうです。

1型糖尿病に関連する遺伝子変異を持った子供はポリオ(小児麻痺)などのウイルスに対する抵抗力が高いことが分かっています。

マウスによる実験では、1型糖尿病のマウスは結核菌に強い抵抗力を示し、結核菌に感染させると1型糖尿病の発症を防げるそうです。

寄生虫実験

寄生虫

炎症性腸疾患の患者に行われた実験

1999年に胃腸科専門医のワインストックという医師がなるべく安全な寄生虫を炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の患者に寄生させる実験を行います。

このときに使用された寄生虫は豚に寄生する鞭虫(べんちゅう)です。
人間に感染してもほとんど症状が出ないということに加え、豚鞭虫は人間の体内では移動や繁殖もしないということから選ばれました。

潰瘍性大腸炎やクローン病の患者計7人が豚鞭虫の卵が2,500匹分入ったゲータレードを飲んだとのことです。

すると、最初の4週間で症状が改善したものの、再び悪化し始め、十週間後には元の炎症に悩まされるようになってしまいました。

次に被験者を増やして3週間に1度、同じように2,500個の卵を飲むようにした所、クローン病患者の約3/4の患者が寛解(かんかい:病状が一次的あるいは継続的に安定すること)状態になり、続いて行われた潰瘍性大腸炎に対する二重盲検(誰がプラセボを処方されたか分からない)では、40%以上の患者に症状の改善がみられました。

炎症性腸疾患の患者も衛生が改善した国や地域に多くみられます。クローン病の患者は都市出身者が多く、寄生虫に感染した経験がほとんど無いのではないかとモイセズは述べています。

喘息の患者に行われた実験

喘息患者に対しては寄生虫学者のプリチャードが鉤虫による実験を行っています。

最初にある女性研究者が100匹の鉤虫の幼虫をガーゼに染み込ませ試してみたところ、ひどい発疹が現れ、下痢や嘔吐を繰り返し、駆虫薬を飲んで実験から撤退しました。

プリチャードが自ら50匹に感染したところ、やはり同じような症状が現れ駆虫薬を飲むこととなりました。

そこで喘息患者には10匹で実験が行われたのですが、ほんのわずかに症状が改善しただけでした。ただし花粉症の症状があった人は大きく改善し、駆虫薬を飲まずにそのままにしたそうです。

プリチャードは後に25匹でも試してみるべきだったと後悔したそうです。

読んでいて、なぜすぐに25匹でやらなかったのかとも思いましたが、このような実験は危険も伴うため簡単にはできないようです。

 ピロリ菌と病気

ピロリ菌についてはブレイザー博士の研究のことや病気の発症に関わる重要な研究が紹介されています。

また、最初は胃がんを発症させる病原菌という扱いだったが実は必要な菌であり、食道がんやアレルギーを防いでいるということに加え、結核の発症を抑えているということにも言及しています。

ピロリ菌についてはまだ謎が多く、アフリカ人はピロリ菌に感染していても胃がんの発症率はとても低いそうです。アフリカではビタミンCが多く含まれているバナナを食べることがガンを防ぐのではないかという見方もあります。

また、欧米では冷蔵庫の普及と共に胃がんが減少しています。これは、それまで塩漬けで保存していたものを食べなくなったせいであり、日本食も塩分を多く含む傾向にあるので胃がんを発症する人が多いと言われています。

動物園のチーターの死因はヘリコバクター属(ピロリ菌もヘリコバクター属)の細菌が引き起こす病気が多いが、野生のチーターはヘリコバクターに感染していても何の問題も無いということにも触れています。

ある報告によるとピロリ菌を除菌した後に、1型糖尿病、関節リウマチ、クローン病などの自己免疫疾患が悪化したというものもあります。

逆に自己免疫疾患やパーキンソン病、心疾患にピロリ菌が関与しているという証拠もあるので、もし胃潰瘍になって医師にピロリ菌を除菌することを勧められたら拒んではいけないとも書かれています。

ピロリ菌と共生する細菌や寄生虫の不在がピロり菌に病気を発症させる可能性が高いようです。

ピロリ菌がなぜ失われるか

ピロリ菌以外の菌を除菌する目的で抗生物質を飲んだ場合でも、1クールの治療でピロリ菌の15~50%は失われてしまうとのことです。

また子供に口うつしで食べ物を与える習慣が無くなりつつあることが、ピロリ菌の減少につながっているともいいます。

虫歯菌が感染するから、という理由で赤ちゃんに口移しで食べものを与えない人も増えていますがこのような行為は感染症を防ぐ代わりに喘息やアトピーなどのリスクを高めていると言えそうです。

ピロリ菌への感染は早ければ早いほど、その恩恵を多く受け取ることができるようです。
慢性胃炎(委縮性胃炎)と急性胃炎 ピロリ菌感染時の症状について」の記事でも書いたように、ピロリ菌発見者の一人、バリー・マーシャルは自分でピロリ菌を飲んで実験を行いましたが、急性胃炎を起こした後にピロリ菌は自然消滅しています。

成人になってからの感染ではピロリ菌は定着しにくく、単に胃炎を発症させて終わりになる可能性が高いのかもしれません。 ピロリ菌

ピロリ菌 Original Update by Yutaka Tsutsumi

体内生態系

ピロリ菌が悪さをするのは体内生態系が不完全である可能性が高いことを示唆する実験があります。

細菌学者ルイ・パスツールは過去に「無菌状態で飼育したマウスに微生物を戻していくとどうなるか」という実験を提案をしていたそうですが、2000年代の初めに本当にこれを実行した研究員がいます。

まず無菌マウスは深刻な免疫異常を示しました、リンパ系組織が欠け、攻撃細胞は発育が遅れ、レギュラトリーT細胞(この本の中で頻繁に出てくる免疫抑制に関わる重要な免疫細胞)の数が少ないという状態です。

この無菌マウスにバクテロイデス・フラジリスという細菌を導入すると、T細胞は正常化し、リンパ系組織の成長が起こりました。

次に野生のマウスに常在している腸内細菌ヘリコバクター・ヘパティクスをバクテロイデス・フラジリスのいるマウスに入れると問題無く定着したものの、無菌マウスに対しては慢性の炎症と大腸炎を起こしました。

このように細菌の種類によって他の細菌の不在が宿主を病気に導く可能性が高そうです。
細菌や寄生虫の相互作用がもたらす体内生態系がどのように構成されているかということが、その人の健康を大きく左右する要素であることは間違いないでしょう。

腸内細菌と食事

遺伝学の研究者タニア・ヤツコネンとジェフリー・ゴードンによると、ベネズエラのアマゾンに住むマラウイ人の腸内細菌は植物性多糖類の消化に優れ、アメリカ人の腸内細菌は単等類の消化を得意としているそうです。

さらにヤツコネンとゴードンは日本人の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:腸内フローラ)は海藻を消化する独特の能力があることを発見します。

日本人のこの能力については、元々腸内にいた細菌が過去のある時点で海藻に取り付いていた細菌から海藻の分解に関する説明書を受け取って自分のものにした、と説明されています。

これらは食習慣の違いが腸内細菌が消化できる食べ物をある程度決めているかもしれないとのことです。

生きた微生物を含む食品を食べることの重要性を示すこれらのデータは、食べた物を消化する能力を腸内細菌が持っていなくても、その食品を元々餌にしていた細菌を体内に取り込むことにより、その細菌が腸内細菌にその能力を分け与えてくれるかもしれないということを示しています。

メタボリックシンドロームと腸内細菌

食生活の変化によるメタボリックシンドロームの増加は腸内細菌が大きく関係しているようです。

ある研究によると、痩せている被験者にジャンクフードを食べさせるとフィルミクテス門の細菌が増え、バクテロイデス門の細菌は減少しました。このような腸内細菌叢の変化により、被験者の摂取したカロリーを取り込んで脂肪として蓄える能力は向上しました。(メタボになりやすくなるということ)

マウスにジャンクフードを与えると人間同様に腸内細菌叢が変化するとともに、腸は透過性が高まりました。(この本には記載されていませんがこれをリーキーガット症候群といい、余計なものまで腸が吸収してしまうことになります)
リーキーガット症候群とは?原因不明の症状や慢性病の原因を探る!

この腸の透過性の高まりは全身に軽度の炎症をもたらすとのことです。 さらに、餌を大量に食べる→肥満する→腸内細菌叢が変化する→炎症が進行する、という悪循環によりインスリン抵抗性が増し(インスリンの効きが悪くなり血糖値が下がらない)2型糖尿病を発症する可能性があります。

モイセズは、こう述べています。

これらの実験から言えることは、「食べ物は、おもに腸内細菌叢を変化させることによって免疫機能に影響を与え続ける」ということである。現代の低線維・高カロリー食では、腸内細菌叢の最も重要な細菌を養うことができない。ファストフードを食べることは、珊瑚礁に下水を垂れ流すようなものである。雑草のような細菌が腸内にはびこり、重要な細菌は衰退してしまう。

便移植(糞便移植)

体内生態系を一挙に回復させる方法として便移植(本では糞便移植)が紹介されています。
便移植とは、健康な人の便を腸内に移植することで腸内細菌叢を変化させる治療方法です。

メタボリックシンドロームと診断された肥満男性に痩せている便を移植すると、血液中の中性脂肪値が下がり、インスリン抵抗性も減少しました。

日本でも炎症性腸疾患の患者に実験的に便移植が行われているのをテレビなどで見かけますが、体内生態系改善の治療として最も現実的な方法かもしれません。

ウイルスとの共生

エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)というウイルスはヘルペス・ウイルスの一種で世界中で多くの人が感染しているウイルスです。

乳幼児期にEBVに感染した場合、何の症状も出ないものの、思春期以降に感染すると伝染性単核球症(キス病)を発症する可能性が高くなります。

さらに十代のときのこの病気にかかった人はその後、自己免疫疾患である多発性硬化症のリスクが3倍にもなるということです。

現在世界人口の95%以上が35歳までにこのウイルスに感染するそうです。そして、EBVは感染する時期によって毒にも薬にもなると書かれています。

これはEBVが早くから人間と共生すべきウイルスであることを示唆します。ピロリ菌同様、母親が噛み砕いた食べ物を乳児に与えていた時代はほとんどの人が離乳期にEBVに感染していたとのことです。

ヘルペス・ウイルスが口唇や性器の粘膜などに潜伏するのは、このウイルスが人体の最も無防備な場所の防衛を強化しているからだ、とウイルス学者のエリック・バートンは述べています。

ウイルス同士の共生

G型肝炎ウイルスとHIV-1型ウイルスの両方に感染している人は、HIV-1型ウイルスだけに感染している人よりエイズ発症までの期間が長く、同様にヒトサイトメガロウイルス(ヘルペスウイルスの一種)とHIV-1型ウイルスに同時に感染している人もHIV-1型ウイルスの増殖を抑えることができるそうです。

一方、アフリカと南アジア(多発性硬化症の有病率が低い地域)ではEBVに感染している人に他の感染が重なると悪性のガンが引き起こされるそうです。

例えば、マラリアとEBVが重なると白血球のガンのリスクが高まり、EBVとHIVではリンパ腫のリスクが高まるとのことです。

理想的な体内生態系についてモイセズはこう述べています。

重要なのは、早期のEBV感染、炎症抑制効果のある腸内細菌叢、環境中の微生物への日常的な曝露、免疫制御回路を活性化する少数の寄生虫である。

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自閉症と寄生生物

10代の自閉症児ローレンスがキャンプで虫に刺されたところ自閉症の症状が大きく改善されました。この虫はツツガムシというダニの一種で幼虫の一時期を寄生虫として過ごすそうです。

以前にも発熱したときに自閉症の症状である興奮状態や自傷行為が和らいでいたということです。発熱は細菌やウイルスが体内に侵入したときに起こる特徴的な症状です。

二週間後、虫刺されの痕が消える頃にローレンスは元の状態に戻ってしまいました。

父親のスチュアート・ジョンソンはインターネットで調べ、ツツガムシに刺された免疫反応が息子の状態を改善したと考えました。そして寄生虫を使って炎症性腸疾患を治療する研究を知った彼は、豚鞭虫卵製剤を生産している会社があることを知り、これを購入します。

まず自分で試して副作用が無いことを確認した後、ローレンスに2週間おきに1,000個の卵を飲ませてみたところ、何も起きませんでした。そこで、2,500個に増量したところ、8週間後にそれまであったパニックを起こさなくなり、質問にも穏やかに答えられるようになりました。

これまでローレンスは行動療法、抗精神病薬、抗うつ剤などの治療を行ってきましたが、これほど病状が良くなった治療方法はありませんでした。

母親の免疫異常が胎児にダメージを与える

家族に自己免疫疾患を持っている人が多いほど自閉症児が生まれる可能性が高まるとのことです。特に母親が自己免疫疾患の場合そのリスクは9倍にもなるということです。

自閉症は母親の体内にいる胎児の時期から始まっていると推測されます。
自己免疫疾患がある母親の免疫は胎児を異物だと認識し脳を攻撃してしまいます。
こうして起こった胎内での炎症が継続しているのが自閉症というわけです。

また男児のほうがこうした母体の免疫のアンバラスの影響を受けやすいようです。

母体の免疫バランス

妊娠中に風疹に感染してしまうと子供が目や耳の障害、精神発達遅滞などが起こる先天性風疹症候群を発症を持って生まれてくる可能性があります。また自閉症児が生まれるリスクは200倍にもなるとも言われています。

梅毒、水疱瘡(みずぼうそう)、麻疹(ましん:はしか)などの感染症も妊娠中に感染すると胎児に発達障害を引き起こすことがあるそうです。

これらは以前は病原菌が直接胎児の発達を妨げると考えられていましたが、どうやら侵入者に対する免疫反応としての炎症がこれらを引き起こすようです。

ある研究では、母親が妊娠初期の3ヶ月間にインフルエンザに感染した場合子供が統合失調症になる可能性が高まり、妊娠中期に母親が喘息やアレルギー疾患を発症した場合、自閉症のリスクは2倍になるとのことです。

帝王切開

帝王切開にはほとんど触れていませんが、帝王切開で出産した子供の自閉症例が一例記載されています。

帝王切開と自己免疫疾患の関係についてはこちらを参照してください。
抗生物質(抗生剤)の副作用とは?原因不明の病気は抗生剤のせい?

抗生物質(抗生剤・抗菌薬)

中耳炎にかかって抗生物質による治療を受けた子供が自閉症になった例が紹介されています。やはり腸内細菌がダメージを受けることが原因のようです。

抗生物質を投与されると腸内の善玉菌は大きくダメージを受けるものの、悪玉菌は生き残る傾向があるようです。こうして悪化した腸内細菌叢は自閉症の一つの要因と言えそうです。

自閉症の原因 まとめ

自閉症の原因は一つではないのかもしれない。母体の免疫制御異常によって胎児の脳の発達が妨げられた結果、自閉症が引き起こされる場合と、腸内細菌の異常が子供の脳の発達に影響を及ぼし、自閉症が引き起こされる場合があるのかもしれない。双方に共通するのは、不適切な炎症である。

自閉症児ローレンスの父親スチュアート・ジョンソンはこう述べています。

「私はもうじき60歳になる。もう子どもができることはないだろう」

「でももし、自分の子どもがこれから生まれてくるとしたら、妻にTSO(ブタ鞭虫卵製剤)を飲ませるだろうね」

生活習慣病

ボリビアのチマネ族の人々は俗に言う善玉コレステロールのHDL値が低く中性脂肪が高い人が多いそうです。それなのに高血圧や心臓病の人は少ないのは、ほとんどの人が何らかの腸内寄生虫に感染しているからだと考えられます。

エジプトの調査では、住血吸虫に感染している人は血中の脂質の値が低いことが発見されています。マウスの実験では住血吸虫に感染させると、高脂肪食のジャンクフードを食べさせているにも関わらず心臓疾患を発症しなかったとのことです。

これまで心臓病の原因は間違った食生活や運動不足、肥満などどされていましたが、寄生虫の不在が大きな要因を占めているののではないかと考える研究者も現れました。

癌(がん)と寄生生物

上海の織物工場で働く女性労働者を調査したところ、綿ぼこりを日常的に吸入すると、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がんのリスクが下がるということが分かりました。これは綿ぼこりに様々な微生物が含まれていることによるものと考えられます。

粉塵やアスベストなどの化学物質を吸入するとCOPDや肺がんを発症する可能性が高まることとは対照的です。

癌(ガン)と感染症、寄生生物との関係

ガンが感染症や発熱により自然治癒することがあるという話はよく聞きます。
実際、感染症や発熱を繰り返している人はメラノーマ(ほくろの癌)のリスクが低いそうです。

リンパ組織のガンであるホジキンリンパ腫は第一子よりも第二子のほうが発病率が低く、保育所に通った経験はリスクを下げるというアレルギー疾患と同様のパターンを示します。

多発性硬化症と同様にEBVへの感染が遅いと発症する伝染性単核球症にかかった経験はホジキンリンパ腫のリスクを4倍に高めるとのことです。

また急性リンパ性白血病も同様に第一子の発病率が高く、保育所に通った経験は発病率を下げます。これら2つのガンは先進国で増加傾向にあり発展途上国では稀ということです。

胃腸科専門医スティーブ・オキーフは南アフリカで働いていた時は大腸がんや大腸ポリープを見た事がなかったそうですが、アメリカで診察を始めるとアフリカ系アメリカ人の患者の半数にポリープが見つかったそうです。

大腸がんの発生率は農村部のアフリカ人では十万人に一人だが、アメリカの黒人は千五百人に一人、白人では二千人に一人が見られるそうです。

オキーフはアメリカ人の肉食が怪しいと思っているそうです。アメリカ人と南アフリカの黒人の腸内細菌を比べると、南アフリカの黒人の腸内細菌のほうが抗炎症作用が強いとのことです。肉食やファストフードばかり食べることは腸内細菌に良いとはいえないようです。

またアレルギー疾患を持っている人は数種類のガンの発症率が基本的に低いということです。アレルギー反応とは本当は抗腫瘍免疫の一形態ではないか、と考える研究者もいるそうです。

フランスでの研究によると、腸から寄生虫を追い出す役割を果たす好酸球は大腸がんを抑制して殺す作用があるとのことです。これは寄生虫がいることで好酸球が大腸がんを防いでいる可能性を示唆します。

老化・うつ病

老化やうつ病にも体内生態系が関係している可能性は高いとのことです。
子どもの頃から微生物や寄生虫と接している人は免疫が正しく作動しますが、そのような経験が乏しければ免疫制御異常が起こりやすく、ストレスにも弱いようです。

遺伝子が長寿が決定している割合は15~30%に過ぎず、食生活や運動、ストレスなどコントロール可能な要素の方が重要だとのことです。

マウスを使った実験ではプロバイオテクス(善玉菌を摂取する)により老年期特有の腸内細菌叢の変化を食い止め、免疫反応を活性できることが証明されています。

寄生虫療法

豚鞭虫

上記したようにアメリカでは寄生虫ビジネスにより豚鞭虫の卵をTSO(Trichuris Suis Ova:豚鞭虫卵製剤)として購入することが可能です。

豚鞭虫は本来は豚に寄生するもので、人間の体内でほとんど悪さをしないということから、寄生虫療法に用いられます。TSOを服用することで自己免疫疾患や自閉症が寛解する可能性があります。

しかし人間の体内で孵化してもすぐに死んでしまうので、2週間に1度服用しなくてはなりません。そのためお金がかかります。調べてみると、海外のあるサイトでは1回の服用分で220ユーロ(約27,000円)とのことなので、月5万円以上かかることになります。

それでも初期の頃は3ヶ月分で5,500ドル(約60万円)と本に書かれているので、大分安くはなっているようです。

まだ情報が少なく日本から購入できるのかどうかもよく分かりません。 豚鞭虫

豚鞭虫

鉤虫

アメリカ鉤虫など人に寄生するものはそれなりに長生きします。鉤虫は平均して5年位人間の腸内で生きるようです。値段は不明ですが豚鞭虫よりお金がかからないのは確かです。

あるクローン病患者は手術を繰り返した後、免疫抑制剤による治療を行っていたものの、副作用がひどく、ある時寄生虫療法を知り豚鞭虫卵を購入します。効果はあったものの上記したように、とても高価だったため出張先の外国で自ら鉤虫35匹に感染しました。(感染方法や鉤虫の種類は不明)

免疫抑制剤の量を減らしても発作は起きず、さらに豚鞭虫卵を併用してみると食物アレルギーも治まったそうです。彼は寄生虫が体内にいることを他人に知られたらデートや仕事に支障があるかもしれない、ということで本名は明かしていません。

彼の主治医も完全寛解していることを認めています。

鉤虫ハイ

鉤虫を体内に入れると人によっては気分がハイになることがあるようです。

二〇一〇年十月、彼は二十五匹の鉤虫を体内に迎い入れた。ほとんどその瞬間、肌の「炎症が少しましになったような気がした」。帰りの飛行機の中で、突然、奇妙な多幸感がわき起こってきた。「立ちあがって、側転したい気分だった」と彼は言う(彼以外にも、数人の体験者が「鉤虫ハイ」に言及している。これは、炎症によってうつ状態が起きることと何か関係があるのだろうか)。何度かアップダウンはあったものの、四月までに乾癬は劇的によくなった。

寄生虫療法が上手くいくとは限らない

ニコライ・Kの場合

カリフルニア大学の学生であるニコライはクローン病治療のため鉤虫療法を試みます。免疫抑制剤タイサブリを使用していたものの副作用のリスクを避けたかったからです。彼の友人の中に炎症性腸疾患に寄生虫療法を試みて効果があった人もいました。

十匹の鉤虫に感染し「鉤虫ハイ」を一週間体験したものの、ひどい頭痛と疲労感、胃部膨満感に襲われてしまいました。事前に何らかの不快感が出ることがある、と警告されていたので、何とか耐えようとしましたが、体重が減り、深刻な貧血状態となり、医師は緊急輸血が必要と判断しました。

ニコライは再チャレンジは考えていないそうです。

スコット・Rの場合

同じくクローン病で1日に14回も下痢にすることもあったスコットは鉤虫療法を試みたところ、鉤虫ハイを経験し下痢も治まりました。しかし、2、3ヶ月で効き目が無くなり元に戻ってしまいました。

鉤虫がいなくなったのだと考えたスコットは新たな鉤虫を体内に取り込んだところ、今度は症状が悪化し、体重は13kgも減り、貧血のため入院し点滴を受けることになりました。

彼の主治医であるジョナサンは鉤虫の品質に問題があったのではないかと考えています。まだこの療法は未完成なのでやらないほうがいいとモイセズに語っています。ジョナサンの患者で寄生虫療法を試した人は6人いたそうですが、今でも続けているのは一人しかいないとのことです。

デボラ・ウェイドの場合

16歳でクローン病と診断されたウェイドは30代で結腸の切除手術を受けるなど様々な治療を行ったものの効果はありませんでした。

体重が減り、毎日血便が出る状態で豚鞭虫のことを知りますが、働くことができずお金が無かったので試すことはできませんでした。

鉤虫のことを知った彼女はメキシコへ行き十匹の鉤虫を体内に取り込みます。最初は体調が悪化しますが(足首の腫れや関節のこわばり等)6週間後症状が好転しました。

食欲が戻り体重が増え痛みや下痢も減りました。そこでウェイドは鉤虫を2,3匹ずつ追加したのですがそれが良くなかったのか症状は急に悪化してしまいます。

検便の結果、鉤虫がすべて失われていることが分かりました。もう一度10匹から新たに始め追加はせずにいると1ヶ月後に寛解状態にすることができました。

しかしまた体調が悪化したので、自分の買った鉤虫が本当に正しいものか証明して欲しいと購入先のローレンス(寄生虫ビジネスを最初に始めた人ですが人格的に問題がある)に抗議し、結局このトラブルが元で鉤虫の入手経路を断たれてしまいます。

彼女は国際生物療法協会のプレゼンで、鉤虫をもっと手軽に入手できるようにして欲しいと訴えます。

その後様々な治療を受けても治らず、抗生物質を使用し人工肛門増設手術を受けます。しかし人工肛門の開口部にクローン病の病変が現れ、もう試みる治療法が無い状態でした。

最終的にまたメキシコに行き10匹の鉤虫を体内に入れ、未知の寄生虫も試したようです。すると失った体重の半分を取り戻し、気分も良くなった彼女はフェイスブックに「寄生虫万歳!」と書き込みしたとのことです。

モイセズ・ベラスケス=マノフ(著者)の場合

著者がメキシコのティファナでアメリカ鉤虫を体内に入れたのは2010年11月のことです。

まず鉤虫を体内に入れた途端、最低な気分となりました。金属的な頭痛が始まり「鉤虫ハイ」は起こりませんでした。

一週間後、軽い腹部膨満感が定着し、二週間後、幼虫が侵入した腕の部分が突然腫れあがりしこりとなり痒みを感じます。三週間目になると差し込むような腹痛が始まりときどき軽い目まいを感じ、一ヶ月目、さらに腹痛が激しくなり下痢をするようになります。

そして好ましい変化も現れ始めます。鼻がすっきり通るようになり副鼻腔がポンと音を立てて開くのが聞こえた、とのことです。

しかし、胃腸の不快感は悪化し、我慢しきれず胃腸薬を飲みます。

1月半ば、爪が以前よりもなめらかになっていることに気がつき、皮膚が柔らかくなったように感じます。さらに指のアトピー性皮膚炎が消えました。

2月の初め頃になってようやく胃腸の症状は治まりますが軽い頭痛はまだあります。

全身脱毛症だった著者ですが、所々僅かに毛が生えてきます。花粉の季節になっても生まれて初めて花粉症の症状が出ません。

しかし5月になって花粉症やアトピー性皮膚炎が再発してしまいます。
検便で確かめてみると卵は無く、寄生虫はいなくなってしまったようでした。

それでも爪のなめらかさは変わらず、軽い頭痛や膨満感は残ったままです。モイセズはもう鉤虫感染には見切りをつけていました。

ところが9月末になって再び副鼻腔がスッキリし、アトピー性皮膚炎が治ります。検便してみると今度は卵が見つかりました。

喉の狭窄などの症状は穏やかになったものの、まだ食物アレルギーは残っているとのことです。また喘息も治りません。花粉症は治り、爪がきれいになり、産毛も生えてきています。アトピー性皮膚炎は完全に消えてしまいました。

これらを踏まえてモイセズは自分と同じ経過をたどるなら、娘に故意に寄生虫を感染させる気にはならない、としています。

不潔な環境が良いわけではない

身の回りの細菌などを殺菌してしまうことはアレルギー等の原因となり得ますが、かといって掃除をしない汚い場所が良いということではありません。

スラム街では喘息が多くみられるとのことです。生息している細菌の数はスラムのアパートも郊外の一戸建てと大差は無いそうです。

細菌の数は同じでもスラム街のような場所はネズミやゴキブリの温床となっていることが多く、ネズミのフケやゴキブリの欠片(かけら)はアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)となります。

また犬や猫の毛などもアレルゲンとなります。子供の頃に犬や猫と一緒に暮らすことはアレルギーの予防になりますが、ゴミとしてそれらの毛だけがあるような環境は良くないということです。

このようにアレルゲンが多く細菌の数が少ない場所はアレルギー等の病気が起こりやすい場所です。

動物もアレルギーになる

犬が炎症性腸疾患やアトピー性皮膚炎になったり猫が喘息や大腸炎になることもあるそうです。

獣医師の話では腸内細菌叢の変化が人間と同様になっていることが原因のようです。

動物園の動物は野生の動物と腸内細菌叢が明らかに異なるとのことです。これは加工食品を食べることが原因と考えられます。

人間と同じように駆虫されたり抗生物質を投与される動物園の動物やペットは人間同様の現代病にかかる可能性が高くなっているといえそうです。

問題点・まとめ

寄生虫療法はまだ正式な医療行為とは言えない段階です。
比較的安全な豚鞭虫に関しては豚鞭虫卵製剤が作られていますが、鉤虫などの寄生虫製剤はまだありません。

便移植に関しても炎症性腸疾患が必ず治るわけではありません。
便の提供者が健康だとしても、その人の遺伝子に合った腸内細菌叢だから健康を保てているわけで、移植希望者の遺伝子が要求する腸内細菌叢と異なっていれば炎症が治まらない可能性があります。

遺伝子が要求する体内生態系がどのようなものであるかは現在の科学・医学ではまだ解明できていません。モイセズは、将来的には生まれてくる赤ちゃんの遺伝子解析により、その子に必要な腸内細菌や寄生虫製剤を与えることで病気を予防することが可能になる時代が来るかもしれないと考えています。

特定の細菌やウイルスを病原菌扱いすることも問題があります。ピロリ菌や一部のウイルスがガンを発症させるのも、それらと共生すべき寄生生物の不在が考えられるからです。

この本から分かる今できることは、子供の病気を予防したいなら微生物に曝露できるような環境で妊娠生活を送る、抗生物質や薬をやたらに服用しない、腸内細菌叢を改善する食事を意識する、子供はできるだけ沢山の人や動物に囲まれて生活させる等です。

子供時代に肥溜めに落っこちるような経験をすれば、間違いなく免疫は強くなるでしょう。子供時代は自然の多い所で過ごすことは重要なことです。成人してからでは細菌などの寄生生物は定着しづらく症状も強くなってしまいます。

モイセズは、幼児が何でも口の中に入れてしまうのは、様々な細菌を取り込んで免疫を鍛えようとしているのではないかと考えています。犬や猫など動物は土の上でも気にせず餌を食べますが、土壌菌のようなものを一緒に摂ることで免疫を鍛えているのかもしれません。

乳児期に下痢をする回数が多い(何らかの細菌や寄生虫に感染していることを示す)ほどその後のアレルギーや自己免疫疾患のリスクは下がるそうですが、やはり赤ちゃんは抵抗力が弱いので、最悪感染症により死亡する場合もあるでしょう。

回虫や蟯虫(ぎょうちゅう)、サナダムシなどと人間が共生していた時代と、それらを駆逐した現代(特に先進国や都市部)では病気の種類が異なることを考えると、感染症を防ぐ方向に進んだ結果、アレルギーや自己免疫疾患などの現代病(ガンなどの生活習慣病も可能性が高い)が増えているのが実情と言えそうです。

遺伝子組み換え食品や食品添加物は避ける

遺伝子組み換え食品や遺伝子組み換え作物を使用した食品添加物を食べることでアレルギーや自己免疫疾患、自閉症など原因不明の病気になることがあるという報告があります。

環境と共に食事も自然の物を食べることが重要です。
遺伝子組み換え食品を食べたことが原因で起こる病気について

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免疫とは?自然免疫と獲得免疫 免疫細胞の働き 炎症とは何か等について

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参考文献

寄生虫なき病
モイセズ ベラスケス=マノフ 文藝春秋 2014-03-17 売り上げランキング : 76402
by ヨメレバ