抗生物質(抗生剤)の副作用とは?原因不明の病気は抗生剤のせい?

抗生物質(抗生剤・抗菌薬)の副作用とは?原因不明の病気について等です。

細菌

失われてゆく、我々の内なる細菌

失われてゆく、我々の内なる細菌」という本を読みました。
この本は微生物学教授、米国感染症学会元会長という肩書を持つ、マーティン・J・ブレイザーという人の書いたものです。

ピロリ菌の重要な役割

ブレイザー博士はピロリ菌の保菌者が胃がんの発生率が高いことを発表し、自身もピロリ菌を保菌していたことから除菌を行います。この時点では当然ピロリ菌は悪玉菌という認識でした。

ところが除菌から6ヶ月が経過した頃から食後に胸やけを感じるようになります。逆流性食道炎(本では胃食道逆流症)でした。
調査の結果、ピロリ菌を持たない人は逆流性食道炎を発症する確率が8倍も高いことを知ります。

さらにバレット食道(食道がんの原因になると言われる食道粘膜の変化)や食道がん(本では食道腺がん)をピロリ菌が防いでいるということも明らかになります。

これらはピロリ菌が胃酸を調節するという重要な役割を担っていることを示唆します。

ブレイザー博士はさらに研究を進め、ピロリ菌が自身を守る為に免疫を抑制することがアレルギーを防ぐ効果につながっていることをつきとめます。
喘息(特に小児喘息)もピロリ菌のいない子供に多くみられるそうです。

ピロリ菌は除菌しないほうがいい?検査方法や感染経路について」の記事でも書きましたが、やはりピロリ菌がいるからという理由だけで除菌するのはやめたほうがいいようです。

子供のうちはピロリ菌は善玉をして働く傾向が強く、悪玉化するのは高齢となってからが多いようです。日和見菌(ひよりみきん:状況により善玉にも悪玉にもなる)が悪玉化するのは肺炎球菌なども同様なので、これらは細菌が悪いというよりも加齢による免疫力の低下のせいと言えるでしょう。

ピロリ菌がいることで胃がんや胃潰瘍のリスクは上がりますが、同時に食道がんや逆流性食道炎のリスクは抑えてくれます。

さらに除菌に使用する抗生物質・抗菌薬(抗生剤)が体に与える影響は無視できません。

スポンサーリンク

ピロリ菌がいることで起こりやすくなる病気

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTAリンパ腫(胃悪性リンパ腫の一つ)、胃がん、胃炎、胃過形成ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病
ピロリ菌は除菌しないほうがいい?検査方法や感染経路についてより)

ピロリ菌がいないことで起こりやすくなる病気

逆流性食道炎、バレット食道、食道がん、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎(本ではアレルギー性皮膚炎)、その他のアレルギー

抗生物質(抗生剤・抗菌薬)の影響とは

家畜には食事と共に大量の抗生物質が投与されるそうです。
何故かというと、それにより動物の体が大きくなるからです。

これは人間でも抗生物質を体内に入れることが肥満の原因となり得ることを示唆します。

現在は耐性菌の問題がクローズアップされてきているので、これを止めさせる方向に動いてはいるようです。(日本の実情は調べていないので不明です)

(↓耐性菌についてはこちらを参照してください)
抗生物質 抗生剤 抗菌薬とは?その種類と副作用 耐性菌の問題について

さらに博士はこの家畜を人間が食べることで残留した抗生物質が体内に入る危険性も指摘しています。

抗生物質(抗生剤・抗菌薬)は、ターゲットとなる細菌だけを殺すことができません。
いってみれば体内の菌に対して無差別に銃を乱射するようなものです。
治療薬として大切な役割がある一方、これによりある種の善玉菌が体内で絶滅してしまう可能性があります。

抗生物質を飲んだ後、お腹が痛くなったり下痢をするのは腸を守っていた細菌が死んでしまうからです。さらにピロリ菌同様免疫を調節している細菌が死ねばアレルギーを発症する可能性もあります。

スポンサーリンク

帝王切開と1型糖尿病の関係

1型糖尿病患者には帝王切開で生まれた人が多いそうです。
帝王切開で生まれるということは、本来乳児が産道を通過するときに母親の持つ細菌を浴びる過程を取り除くことを意味します。

女性の膣内には常在菌が沢山棲息しています。
羊水の中で無菌状態だった乳児はここを通過することで最初の細菌に触れることになります。
こうして母親の細菌を取り込むことで常在菌のベースを獲得するわけですが、帝王切開で生まれてしまうと常在菌の構成が全く変わってしまうそうです。

本来免疫をコントロールしてくれる可能性のある細菌に触れずに育った子供は自己免疫疾患である1型糖尿病に罹る可能性が高くなるということです。

このような事態を防ぐために博士は帝王切開の際に膣内ガーゼ法を行うことを推奨しています。
これは膣液植え付けとも呼ばれる方法で、母親の膣液を染み込ませたガーゼで乳児の体を拭き、意図的に母親の細菌に曝露(ばくろ)させる方法です。

母親自身の健康に問題が無ければ、この方法で乳児が本来持つべきだった細菌をある程度カバーすることが可能です。

抗生物質と自己免疫疾患、自閉症

博士の娘が幼少の頃、中耳炎(本では耳感染)が治らず大量の抗生物質を投与したことがあるそうです。

彼女は成長する過程で軽い喘息を発症し、マンゴーなどいくつかの食物アレルギーがありました。

さらに彼女は世界を旅して恵まれない人を助ける活動をするのですが、旅の途中下痢に襲われ何度か抗生物質を飲んだそうです。

結果として、セリアック病という腸に起こる自己免疫疾患を発症してしまいます。
セリアック病は小麦などに含まれるグルテンに免疫が反応してしまう病気です。

博士は、抗生物質による常在菌の消失が自己免疫疾患やアレルギーを引き起こすことを実の娘を通して知るに至ったわけです。

潰瘍性大腸炎やクローン病等の炎症性腸疾患の原因も抗生剤の関与の可能性が高いとのことです。

博士は仮説として自閉症も細菌の消失が原因である可能性が高いとしています。
腸内細菌を失うことで腸管神経と脳の間のセロトニンの作用に問題が生じる可能性があるとのことです。

自閉症の原因についてはこちらに詳しく記載しています。
アレルギー、自己免疫疾患、自閉症の原因は体内の生態系にあった!

問題の解決策

以上から言えることは、抗生物質は必要最小限の使用にとどめることが大切になります。
歯科治療の際は外科的介入や口腔衛生を守ることで、抗生物質を使用せずとも対処できると博士は述べます。

この辺りは歯科医自身が常在菌に対する認識を持っているかどうかも重要になります。
歯医者や医者を選ぶ時に安易に薬を処方する医者は要注意ということです。

また帝王切開を行う人の中に、その方が楽だからという理由で行う人も少なくないそうですが、認識を改める必要があります。
医者側も時間の節約ができることや、お金儲けの為に帝王切開を勧めることがあるそうなので気をつけなくてはなりません。

今後の研究によりターゲットとなる細菌だけを殺せる新しい抗生物質・抗生剤の登場が待たれます。
ただし、その場合治療費(薬代)が上がることは避けられないようです。

現段階での抗生物質の使用を考える場合、リスクとリターンのバランスを良く考えて使用しなくてはいけないことが分かります。

スポンサーリンク

参考文献

失われてゆく、我々の内なる細菌
マーティン・J・ブレイザー みすず書房 2015-07-02
売り上げランキング : 18846

by ヨメレバ