ピロリ菌は除菌しないほうがいい?検査方法や感染経路について

ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の除菌の是非、検査・除菌方法、感染経路などについて解説します。

ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃粘膜に感染・生息するらせん状グラム陰性桿菌です。
胃の中には胃酸という名の塩酸が存在するため、口から胃に入ってきた細菌はすべて殺菌されてしまう、と長い間考えられてきました。
この固定概念のせいでピロリ菌の発見は遅れたといわれています。

ピロリ菌を発見したロビン・ウォーレンとバリー・マーシャルは1984年に二人の連名でピロリ菌(このときはまだこの名前も決まっていなかった)と十二指腸潰瘍、胃潰瘍の関わりについての研究成果を発表します。まだほんの最近のことです。

ピロリ菌の関与する疾患

ピロリ菌の関与が考えられている病気には以下のものがあります。

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ピロリ菌の感染について

ピロリ菌は口を通して胃の中に入ってくると考えられています。
しかしまだどこからどのように人の胃に感染するのか、十分には分かっていません。

ピロリ菌は酸素を好まない嫌気性菌(けんきせいきん)に近い性質を持つため、汚染された水が原因である可能性が高いと考えられています。

実際、感染者は上下水道の整っていない発展途上国・後進国に多くみられ、所得の低い層の感染率は所得の高い層を上回っています。

日本でも感染者は60歳以上の年代に多く、若い世代では減っているというデータがあります。

1992年当時の調査で、40歳以上の感染率は80%以上、20歳以下の感染率は20%を下回っていました。現在はトータルで国民の50%は感染していると考えられています。

成人になってからピロリ菌に感染すると、急性胃炎を起こす可能性が高いですが、乳幼児の時期に感染している場合、ほとんどの場合症状はありません。

キスではうつらない

ピロリ菌は口から感染しますが、ピロリ菌の持つ胃酸中和作用はそれほど強くはないので、成人になってから口にピロリ菌が入っても、胃の粘膜に届く前に死滅してしまいます。
このため、キスなどで感染することはありません。

ピロリ菌が感染しやすいのは、胃酸の分泌力が弱い乳幼児期といわれています。

内視鏡からの感染

また成人になってからでも、内視鏡に菌が付着していた場合、鉗子口にピロリ菌の生育に適した場所があるため消毒が不十分でないと感染してしまいます。

ピロリ菌の存在が明確になった現在、消毒不十分で内視鏡から感染することはまず無いと思いますが、ピロリ菌のガイドラインができたのが2000年なので、以前に検査を受けた人の中には内視鏡による感染の可能性があります。

ピロリ菌の除菌は不要?

最新! 腸内細菌を味方につける30の方法」の中でこのような記述があります。

しかし、最近の研究により、ピロリ菌は胃の働きに欠かせない共生菌であることが明らかになってきました。ニューヨーク大学のブレイザー教授は、ピロリ菌の研究を25年間にわたって行っています。
教授は、ピロリ菌には胃酸の分泌量をコントロールする働きがあるとしています。胃酸量の調整をサポートすることで、ピロリ菌も居心地がよく、宿主の胃の状態を整える働きをしているといいます。
(中略)
すなわち、ピロリ菌が食欲のコントロールに一役買っている可能性が示されたのです。
また、抗生物質を使ってピロリ菌を除菌した人は、生まれながらにピロリ菌を持っていない人より、体重が増えやすいことも報告されています。

ピロリ菌は自然環境で人間に感染する細菌なので、人間とは共生関係にある菌とのことです。結核菌を保菌していても必ずしも、結核にかかるわけではないことと同様に、通常は無害です。
(この本の中に結核菌を保菌していると花粉症を防いでくれる、という記述もちらりとあります。)

著者の藤田先生は自分の腸に寄生虫であるサナダムシ(成長すると10m以上になる)を長年寄生させ、無害であることを証明してみせると共に、サナダムシがいたほうが健康に良いとまで言っている人です。

サナダムシもピロリ菌同様に汚染された河川などに生息していますが、現在のように化学的に汚染された河川には棲めません。化学薬品が氾濫する現在、様々な共生菌が姿を消すことを藤田先生は危惧しています。(この本にはサナダムシのエピソードはありません)

いわゆる善玉菌、悪玉菌、日和見菌(ひよりみきん)と分けたときに、ピロリ菌も結核菌も日和見菌です。
日和見菌とは人間の体内に住む菌の勢力で最も大きく、その人の状態により善玉菌としても悪玉菌としても働く可能性のある菌のことです。
健康な状態なら善玉菌として人間を助けますが、ストレスがかかると悪玉菌として病気を発生させる可能性があります。

通常、ピロリ菌は胃酸の分泌を調整し、食欲をコントロールしてくれます。
ピロリ菌を保菌していると逆流性食道炎に罹り(かかり)にくいというデータもあります。

また、結核菌を休眠させる作用もあるそうです。
感染症には感染すべき時期がある より。このサイトによると、乳幼児期に感染したピロリ菌は善玉菌として作用する率が高いそうです)

しかし、ストレスがかかり過ぎたり、普段の生活習慣が良くないと病気を発症させる可能性もあります。

ピロリ菌が病気を発生させるのではなく、普段の体調管理が良くないことがピロリ菌に病気を発生させるということを理解しておくべきでしょう。

イチロー選手の胃潰瘍

ピロリ菌が原因とされる病気の一つに胃潰瘍があります。

2009年、メジャーリーガーのイチロー選手は胃潰瘍で故障者リスト入りし、開幕からしばらく試合に出ることができませんでした。

イチロー選手がピロリ菌に感染していたかどうかは不明ですが、その1ヶ月前に4年に一度のWBCに出場しています。イチロー選手は国民の期待を一身に受けながら、不調でしばらく打てない状態が続きました。

終盤に来てやっと調子を上げたイチロー選手は最後には試合を決めるヒットを打ち、ヒーローになりますが、そこまでの過程はとても苦しいものでした。

本来のシーズンでは無い時期に緊張を強いられる戦いが続き、さらに極度の不振によるストレスは計り知れないものだったと思います。

このストレスが胃潰瘍の原因となったのは間違いないでしょう。
仮にピロリ菌が存在せず、胃潰瘍にならなかったとしても、おそらくこのストレスは別の形でイチロー選手の体を傷つけたのではないでしょうか。

ピロリ菌の検査

ピロリ菌に感染しているかどうかを確かめる為の検査方法はいくつかありますが、一般的に行われている精度が高い方法は、尿素呼気試験ピロリ菌便中抗原検査(便中ピロリ菌抗原測定)です。

内視鏡を使って菌を採取し判定する方法もありますが、時間がかかったり精度に問題があるなど、検査だけが目的の場合には適さないようです。(病気の診断と同時に行う場合に有用)

尿素呼気試験とは

内視鏡を使用せずに繰り返し行うことのできる安全性の高い方法です。
事前に尿素を含んだ経口薬を服用します。
その後に呼気(息を吐くこと)を採取し、検査します。

ピロリ菌便中抗原検査とは

便の中のピロリ菌の抗原を測定する方法です。
簡単で信頼性の高い検査方法です。

↓自宅で行うことも可能です。

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌に感染していても、病気や症状が無い場合、除菌に保険は適用されません。
ピロリ菌の除菌を保険適用で受けるには、胃潰瘍、十二指腸潰瘍胃炎のいずれかにかかっているという診断が必要になります。

いずれも内視鏡検査を受けて診断してもらう必要があります。

ピロリ菌の除菌方法

プロトポンプ阻害薬(PPI)と抗菌薬二剤を用いた「三剤療法」が行われます。
これらの薬を1日2回、1週間飲み続けます。

飲み忘れてしまうと除菌率が下がるので、飲み始めたら必ず最後まで欠かさず服用する必要があります。副作用もあるので除菌に失敗すると体にダメージを与えるだけになってしまいます。(抗菌薬は体に必要な菌も沢山殺してしまいます)

きちんと薬を飲んだ場合の除菌成功率は約80%です。
除菌が成功したかどうかは、再度検査を受ける必要があります。

除菌に失敗した場合、二次除菌法として、一部薬を入れ替えて、もう一度約1週間の服用を行います。

ほとんどが二次除菌までで除菌できますが、二次除菌も失敗した場合、三次除菌となります。ただし、その場合の除菌成功率は大きく下がり、50%以下の成功率となります。

ピロリ菌の除菌に伴う副作用

多いのが下痢、軟便です。
ほとんどは軽症ですが、重症の下痢を起こす人もいます。

その他に、味覚異常、舌炎、口内炎、皮疹、腹痛、放屁、便秘、頭痛、肝機能障害、めまい、掻痒感(そうようかん:体の一部がむずむずしたり、かゆくなること)などが生じる場合があります。

前述したように除菌に成功した場合、逆流性食道炎や、肥満、コレステロール値の上昇などが起こる場合があります。

まとめ

現在の医学界においてピロリ菌は病気を発生させる悪玉菌という扱いを受けています。
しかし、食生活を含む生活習慣がきちっとしていれば、ピロリ菌はいないよりもむしろ居たほうが良い存在であることが分かると思います。

体内にはピロリ菌以外にもこのような菌は存在していて、まだ見つかっていないものもいるのではないでしょうか。

ピロリ菌の除菌を考える場合、慢性胃炎などの症状が現れていると共に、ストレスや生活習慣の改善が困難な場合にやむを得ず行うもの、という風に捉えていたほうが良いと思います。

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こちらでもピロリ菌について取り上げています。
抗生物質(抗生剤)の副作用とは?原因不明の病気は抗生剤のせい?
アレルギー、自己免疫疾患、自閉症の原因は体内の生態系にあった!

参考文献

「胃の病気とピロリ菌―胃がんを防ぐために」
浅香 正博 著

「最新! 腸内細菌を味方につける30の方法 – 健康・長寿・美容のカギは腸内フローラと腸内細菌!」
藤田 紘一郎

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