脳下垂体と下垂体前葉ホルモン 成長ホルモン プロラクチン等について

脳下垂体(下垂体)と下垂体前葉ホルモン(成長ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン)について解説します。

脳下垂体

脳下垂体 Original Update by Life Science Databases(LSDB).

目次

下垂体とは

下垂体(脳下垂体)は間脳の視床下部に接した内分泌器官です。
前葉と後葉に分かれ(中葉は退化している)、それぞれ下垂体ホルモンを分泌します。

下垂体と視床下部

下垂体前葉と下垂体前葉ホルモン

下垂体前葉では、視床下部の神経細胞で合成された視床下部ホルモンの刺激を受け、下垂体前葉ホルモンの産生・分泌が行われます。

下垂体前葉ホルモンにはいくつか種類があり、受け取った視床下部ホルモンの種類により、産生・分泌、または分泌の抑制が行われます。

下垂体から分泌された下垂体前葉ホルモンは、標的となる器官へ血液を介して運ばれます。

下垂体前葉ホルモンには、成長ホルモンプロラクチン甲状腺刺激ホルモン副腎皮質刺激ホルモン性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン)があります。

下垂体後葉についてはこちらを参照してください。
下垂体後葉ホルモン オキシトシン バソプレシンの基本的な作用について

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成長ホルモン(GH)

視床下部から成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)が分泌され下垂体前葉がそれを受け取ると、成長ホルモン(GH)が分泌されます。

成長ホルモンは骨や筋肉を成長させる(軟骨細胞の増殖や蛋白合成促進)と共に、血糖の上昇や維持、脂肪の分解促進、電解質の再吸収促進、など代謝に作用します。

これらは、成長ホルモンを肝臓が受け取りIGF-1(インスリン様成長因子)が分泌されることや、成長ホルモンが全身を巡り直接細胞に作用することで行われます。

成長ホルモンはいつ分泌が増加する?

成長ホルモンは睡眠時に多く分泌されます。特に睡眠初期、眠りについてから約3時間までが分泌のピークと言われています。

22時~2時に分泌されるという話を聞くことがありますが、それは一般的に人が22~23時位に就寝すると仮定しての話です。

その他に、運動低血糖ストレス、アルギニン(アミノ酸)、ドーパミン、エストロゲンにより分泌が増加します。

成長ホルモンの分泌は加齢と共に減少します。

成長ホルモン分泌を抑制するもの

視床下部ホルモンであるソマトスタチン(成長ホルモン分泌抑制ホルモン:膵臓からも分泌される)を下垂体が感知したときや高血糖時は成長ホルモンの分泌は低下します。

成長ホルモンに関わる病気や症状

成長ホルモンの分泌が過剰だったり低下した状態が続くことで様々な病気や症状を生じます。

成長ホルモン分泌過剰

高血糖、糖尿病脂質異常症高血圧高リン血症、高身長(小児)、四肢末端肥大症、軟部組織肥厚、先端巨大症、巨人症(下垂体性巨人症)。

成長ホルモン分泌低下

低血糖(小児)、体脂肪の増加、低身長、骨年齢遅延、筋力低下、低身長症(成長ホルモン分泌性低身長症)。

プロラクチン(PRL)

プロラクチン(PRL)は乳汁分泌ホルモンまたは乳汁産生ホルモンといわれるものです。
妊娠に大きく関わるホルモンなので、非妊娠時や男性においての分泌は少なく、作用することもありません。

妊娠すると分泌が増加し乳腺の発育を促進しますが、胎盤などで作られる女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンにより乳汁の分泌は抑制されます。

分娩(出産)によりエストロゲンやプロゲステロンが低下することで、乳汁(ちしる、にゅうじゅう:おっぱい、お乳)の分泌が開始されます。授乳中の乳児による吸引刺激によりプロラクチンの分泌は増加します。射乳(しゃにゅう:乳が出ること)はオキシトシンの作用によるものです。

プロラクチンには性腺抑制作用があり、授乳期は無排卵・無月経となります。授乳を行わない場合、プロラクチンの分泌は低下します。分娩後3~4ヶ月でプロラクチンの分泌は非妊娠時のレベルに戻ります。

プロラクチンの分泌を増加させるもの

睡眠、ストレス、妊娠、授乳、ドーパミン受容体遮断薬(抗精神薬など)、レセルピン(精神安定剤、降圧剤など)、甲状腺放出ホルモン刺激ホルモン(TRH)、エストロゲン、胸痛(胸壁疾患)によりプロラクチンの分泌は増加します。

プロラクチンの分泌を抑制させるもの

ドーパミン、ブロモクリプチン(持続性ドパミン作動薬)、カベルゴリン(ドパミン作動薬)によりプロラクチンの分泌は抑制されます。

プロラクチンに関わる病気や症状

プロラクチン分泌過剰

乳房肥大、乳汁漏出、無排卵、無月経、精子産生障害、プロラクチン産生腺腫

プロラクチン分泌低下

乳房の萎縮、乳汁分泌不全、シーハン症候群。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は甲状腺濾胞上皮細胞のTSH受容体と結合し、甲状腺ホルモンの産生と分泌を促進します。また、甲状腺の形態と重量を維持します。

甲状腺刺激ホルモンの分泌を増加させるもの

寒冷刺激、甲状腺放出ホルモン刺激ホルモン(TRH)により甲状腺刺激ホルモンの分泌は増加します。

甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制させるもの

甲状腺ホルモン、ドーパミン、グルココルチコイド(糖質コルチコイド)、ソマトスタチンにより甲状腺刺激ホルモンの分泌は抑制されます。

甲状腺刺激ホルモンに関わる病気や症状

甲状腺刺激ホルモン分泌過剰

甲状腺腫(甲状腺肥大)、甲状腺機能亢進症状、甲状腺刺激ホルモン産生腺腫

甲状腺刺激ホルモン分泌低下

甲状腺機能低下症状、続発性甲状腺機能低下症

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)

副腎皮質刺激ホルモンコルチゾール(糖質コルチコイドの一種)と副腎アンドロゲンの合成を促進します。また、副腎皮質の構造、重量を維持し、血流を増加させる作用もあります。

副腎皮質刺激ホルモンの分泌を増加させるもの

ストレス、低血糖、メチラポン(コルチゾールの合成を抑制する薬)、サイトカイン(免疫細胞の情報伝達に使われる蛋白質)の一部、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、バソプレッシン(AVP)により副腎皮質刺激ホルモンの分泌は増加します。

副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑制させるもの

グルココルチコイド(糖質コルチコイド)により副腎皮質刺激ホルモンの分泌は抑制されます。

副腎皮質刺激ホルモンに関わる病気や症状

副腎皮質刺激ホルモン分泌過剰

コルチゾール過剰症状として、中心性肥満(手足は痩せているのに顔や体が太っている)、ムーンフェイス(満月様顔貌:脂肪の沈着により丸顔になる)、高血圧、糖尿病、易感染性(容易に感染する)、筋力低下(筋委縮)。

副腎アンドロゲン過剰症状として、性腺機能低下(性欲低下、男性不妊)など。

クッシング病、異所性ACTH産生腫瘍。

副腎皮質刺激ホルモン分泌低下

コルチゾール欠乏症状として、疲れやすい、低血糖、低血圧、水利尿不全など。

副腎アンドロゲン欠乏症状として、腋毛や恥毛の脱落など。

下垂体前葉機能低下症、ACTH単独欠損症。

性腺刺激ホルモン(LH・FSH)

性腺刺激ホルモンは性腺(卵巣、精巣)に作用して、女性の場合、卵胞の発育、排卵、黄体形成、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の産生を刺激します。男性の場合は、精巣の発育、精子形成、男性ホルモン(テストステロン)の産生を促進します。

性腺刺激ホルモンには黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)があります。

性腺刺激ホルモンの分泌を増加させるもの

性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、クロミフェン(排卵誘発剤)により性腺刺激ホルモンの分泌は増加します。

性腺刺激ホルモンの分泌を抑制させるもの

エストロゲン、テストステロンにより性腺刺激ホルモンの分泌は抑制されます。またインヒビン(糖タンパク質ホルモン)は卵胞刺激ホルモンの分泌を抑制します。

性腺刺激ホルモンに関わる病気や症状

性腺刺激ホルモン分泌過剰

思春期の早期発現(小児)、骨端線(こつたんせん:骨を成長させる部位)の早期閉鎖(小児)、性早熟症(思春期早発症)。

性腺刺激ホルモン分泌低下

女性の場合、無月経、不妊、性器・乳房の萎縮、男性の場合、男性不妊、性欲低下、精巣萎縮、男女共に下垂体前葉機能低下症。

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下垂体後葉ホルモン オキシトシン バソプレシンの基本的な作用について

参考文献

「病気がみえる vol.3: 糖尿病・代謝・内分泌」
医療情報科学研究所

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