アルコールの分解・代謝・分解酵素について、飲める人・飲めない人のタイプ、アセトアルデヒドとは?下戸の人が飲むとどうなるのか、アルコール性肝障害などについてです。
アルコールの分解(代謝)
お酒を飲むと、含まれているアルコールは胃や小腸で分解されず、そのまま吸収され門脈を通って肝臓に運ばれた後、分解、解毒が行われます。
肝細胞にはアルコールを分解するアルコール脱水素酵素(ADH)があり、アルコールを酸化してアセトアルデヒドという物質に変えます。次にアセトアルデヒドの酸化酵素であるアセトアルデヒド脱水酵素(ALDH)の働きにより毒性の強いアセトアルデヒドを無害な酢酸に変えます。
最終的に酢酸は二酸化炭素と水に分解され、息や汗、尿として体から排出されます。
下戸とは?お酒が飲める人と飲めない人の違い
下戸(げこ:お酒が飲めない人、弱い人)と上戸(じょうこ:お酒を飲む人、強い人)は何が違うのでしょうか?
下戸と上戸は医学的にはアセトアルデヒドの分解(代謝)能力を指します。 アセトアルデヒドを分解する酵素活性の強さは3段階あり、NN型(強い)、ND型(弱い)、DD型(非常に弱い)に分けられます。
白人や黒人はNN型がほぼ100%なのに対して、日本人はNN型が55~56%、ND型は約40%、DD型は4~5%といわれています。
両親が共にNN型ならば子もNN型になり、片方がNN型でもう片方がDD型ならば子はND型になります。NN型とND型の間に生まれれば子はNN型かND型になります。ND同士の場合3つのタイプすべてになり得ます。
自分のタイプを正確に、そして更に詳しく知りたい場合、遺伝子検査で知ることができます。
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各タイプの特徴
NN型(お酒が強い人)
NN型はお酒が強い人、好きな人です。 飲んでも顔が赤くならなかったり、赤くなるまでに時間がかかります。
このタイプの人は健康であれば、適量のお酒を毎日飲んだほうが体に良い人達です。
適量とは、日本酒1合、ビール1本、焼酎0.6合、ワイングラス1杯、ウイスキーダブル1杯程度です。
また脂肪肝が心配な人や糖質を控えたい人は、日本酒やビールよりも蒸留酒である焼酎やウィスキーがお勧めです。肝臓病や糖尿病などの病気がある場合は禁酒や節酒が非常に重要になります。
注意したいのは、肝臓病などになりやすいのもこの人達だということです。 強いといっても適量を越えて飲み続ければ体にダメージを与えてしまうので、十分気をつける必要があります。
ND型(お酒が弱い人)
アセトアルデヒドを分解する能力が弱く分解に時間がかかる人です。
お酒を飲む場合、ゆっくり飲む必要があります。
分解に時間がかかる為、飲むと肝臓に負担がかかります。
多くの場合コップ1杯程度のお酒ですぐ赤くなります。
お酒を飲む回数が増えると次第に酵素活性が強くなるので、訓練すれば段々飲めるようになるのもこのタイプの人ですが、NN型に比べ、飲酒の習慣が食道がんなどの病気のリスクを高めるといわれているので注意が必要です。
付き合いや接待で飲む時などは特に注意が必要です。自分は飲めると勘違いして習慣的に飲んでしまうと体にダメージを受けやすいので、無理せず、飲みたい分だけ飲むようにするといいでしょう。
適量はNN型の半分以下です。毎日飲む必要はありません。
DD型(お酒が非常に弱い人)
お酒が全く飲めない人です。
無理に飲むと急性アルコール中毒などを起こしやすいです。
自分の体質が良く分かっていない時に、大学の新歓コンパなどで無理に飲まされ、倒れて救急車で運ばれてしまうというようなことが起こります。
無理に勧められても断固として断る必要があります。 お酒を飲む必要が全くない、飲んではいけない人達です。
アルコール性肝障害とは
飲酒を常習的に行うことで起きる病気です。
アルコール性肝炎、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝硬変(アルコールが原因で起こる肝硬変)などの種類があります。
アルコール性肝硬変は1日の飲酒量が日本酒換算で3合以上を5年以上続けると発症リスクが生じます。
これらの病気の治療について最も重要なことは禁酒です。
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参考文献
「カラー図解 生理学の基本がわかる事典」
石川 隆 (監修)
「肝機能の数値が悪い人がまず最初に読む本 最新版」
広岡 昇 (監修)
「肝臓病の最新治療」
泉 並木 著