生理がこない、無月経が起こる病気、乳汁漏出無月経症候群、神経性食欲不振症(拒食症)、シーハン症候群、 多嚢胞性卵巣症候群の原因、症状、治療について解説します。
無月経(生理がこない)とは3ヶ月以上月経がない状態をいいます。
初経前、閉経後、妊娠、産褥(さんじょく:妊娠・分娩により起こった母体や生殖器の変化が分娩の終了から妊娠前に戻ること)、授乳期の無月経は生理的な問題ありません。
無月経は原発無月経と続発無月経に分けられます。
⇒続発無月経についてはこちら
目次
原発無月経
原発無月経は18歳を過ぎても初経が起こらないものです。
遺伝的要因によるものが多いです。
以下は続発無月経の病気です。
乳汁漏出無月経症候群
妊娠、分娩、産褥以外の時期で乳汁分泌と無月経が起こる疾患です。
高プロラクチン血症に伴い出現します。
⇒高プロラクチン血症 クッシング病の原因 症状 治療について
神経性食欲不振症(拒食症)とは
痩せる(やせる)ことで現実のストレスを回避できるような心理的要因により、過度の食事制限を行い著しく痩せてしまう病気で、心身症の一つです。
食生活の異常や精神症状の他、体重減少により無月経をはじめ様々な内分泌・代謝異常を起こします。
かつては思春期の女性に多くみられましたが、年齢層の拡大や男性患者の増加など多様化する傾向にあります。
神経性食欲不振症の原因
何らかの心理的ストレスがあり、痩せることでこのストレスを回避できるという錯覚(擬似的な安心感)に陥っています。
ストレスに対処するスキル(コーピングスキル)が未熟であることが原因です。
神経性食欲不振症の症状
標準体重の-20%以下まで痩せてしまいます。
拒食、大食、排出行為(意図的に吐く、下剤の使用)などがみられ、体重増加や肥満に対して極端な恐怖を感じます。
本人に病気という自覚が乏しいのも特徴です。
除脈、低血圧、低体温、低血糖、脂質異常、肝機能障害などがみられることもあります。
無月経となる場合があります。
飢餓状態になると反動で食に対する執着が大きくなり、盗み食い、過食、大食→排出行為を繰り返したりします。
飢餓状態で精神が不安定になり人格の変化や強迫観念を抱く場合もあります。また、集中力や判断力の低下、不眠が起こる場合もあります。
病気であることや空腹、痩せていることを否定しようとする傾向があります。
神経性食欲不振症の治療
身体的な治療と心理的な治療が行われます。
栄養面
経口摂取が不可能な場合、経管栄養、経静脈栄養が行われます。
精神面
支持療法、認知行動療法、対人関係療法などが行われます。
無月経に対する治療
体重を回復することで改善することが多いです。
必要に応じて女性ホルモンを補充するカウフマン療法が行われます。
シーハン症候群とは
分娩時の大量出血またはショックにより、下垂体血管に攣縮(れんしゅく:痙攣性の収縮)や血栓が生じて下垂体の梗塞・壊死が起こり、下垂体前葉機能低下となる病気です。
シーハン症候群の原因
分娩時の大量出血が原因です。
下垂体は妊娠~産褥期に2倍の容積に増大していて、必要となる血流量も増えています。そこに大量出血が起こると、下垂体は虚血(血が足りなくなる)を起こし壊死してしまいます。
シーハン症候群の症状
無月経、性器・乳腺の萎縮、やせ、乳汁分泌低下、恥毛・腋毛の脱落、疲れやすい、低血糖症状などが起こります。
最初に乳汁分泌低下が起こることが多く、次いで乳腺の萎縮が起こります。
無気力、疲れやすいなどの症状は甲状腺や副腎の機能が低下する重症時に起こります。
シーハン症候群の治療
甲状腺ホルモンの不足に対してサイロキシンの補充療法が行われます。
副腎皮質ホルモン不足に対しては、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)の補充療法が行われます。
無月経、更年期様症状に対してはカウフマン療法(女性ホルモンを補充)が行われます。
挙児希望(妊娠を望む)の場合、ゴナドトロピン療法による排卵誘発が行われます。
多嚢胞性卵巣症候群とは
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)は両側卵巣の多嚢胞性腫大に何らかの月経異常、不妊を伴う内分泌疾患です。
多嚢胞性卵巣症候群の原因
複数の病因が様々な割合で影響し発症します。
大きな要因として、卵巣の莢膜細胞(きょうまくさいぼう)にて男性ホルモンであるアンドロゲンが過剰に産生されるということがあります。
アンドロゲンが過剰生産されると卵胞の発育が障害され月経異常や男性化徴候などが起こります。
もう一つの要因として肥満によるインスリン抵抗性があります。
インスリン抵抗性があると血中のインスリン値が上昇し、やはりアンドロゲンの産生を促進してしまいます。
肥満例は日本人の場合、欧米人に比べて少ない傾向があります。
多嚢胞性卵巣症候群の症状
月経異常(無月経、希発月経、無排卵周期症)、不妊などが起こります。
また男性化徴候として、多毛、にきび、声の低音化、陰核肥大などが起こる場合があります。
肥満となる場合があります。
多嚢胞性卵巣症候群の治療
肥満(BMIが25以上)がある場合、減量を行います。
挙児希望(妊娠を望む)の場合、クロミフェン療法やゴナドトロピン療法が行われます。また、手術療法として、卵巣皮質に穴を開け自然排卵の回復を期待する、腹腔鏡下卵巣多孔術が行われる場合があります。
挙児希望がない場合、黄体ホルモンを投与するホルムストルム療法が行われます。
多毛、にきびに対しては低用量経口避妊薬が用いられます。
参考文献
「病気がみえる vol.9: 婦人科・乳腺外科」
医療情報科学研究所 (編集)