血液の成分、血球、血漿、血清、造血や造血幹細胞などについて解説します。
血液とは
血液は成人の体重の約8%を占め、その1/3を失うと生命に危険が及ぶなど生命維持に不可欠な液体です。
主な役割は酸素、二酸化炭素、栄養、ホルモン等の運搬や病原体、異物からの生体防御、止血などです。
血液の成分
血液は血球と血漿(けっしょう)に大別されます。
血球
血球は血液の約45%を占める細胞成分です。
血球の約99%以上は赤血球で残りの1%未満は白血球と血小板です。
左から赤血球、血小板、白血球中のリンパ球
赤血球
赤血球の主な役割は全身へ酸素を運ぶことです。また二酸化炭素の運搬にも関与しています。
血液が赤く見えるのは赤血球の中にあるヘモグロビンが赤色をしているためです。
骨髄で産生された後、約120日間体内を循環し、最後はマクロファージに貪食されます。
ヘモグロビン
ヘモグロビンはヘムとグロビンからなり、酸素の運搬に重要な役割を果たします。
ヘモグロビン Original Update by https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=179014
血小板
血小板の主な役割は止血です。
傷ついた血管内皮下組織のコラーゲンに粘着し活性化し、血小板同士で集まり固まることで傷ついた血管を塞ぎ止血します。
白血球
白血球の主な役割は血管内や組織内で体内に侵入した病原体や異物から体を守ることです。
顆粒球、単球、リンパ球の3つに大別され、それぞれ役割や機能が異なります。
白血球(免疫細胞)の詳細についてはこちらを参照してください。
⇒免疫とは?自然免疫と獲得免疫 免疫細胞の働き 炎症とは何か等について
血漿
血漿は血液の約55%を占める淡黄色で透明な液体成分です。
血漿の約91%は水です。
1%が電解質、7%が血漿蛋白(アルブミン、凝固因子、グロブリン)、残りの1%はグルコース、アミノ酸、脂質、ビタミン、老廃物、ホルモンなどです。
血清
血清は血漿から止血のための凝固因子であるフィブリノゲンを除いたものです。
血漿蛋白
血漿に含まれる多くの蛋白質を血漿蛋白といいます。
血漿蛋白から凝固因子を除いたものを血清蛋白といい、アルブミンとグロブリンに分かれます。
アルブミン
血漿浸透圧の維持や物質の搬送に関わります。
グロブリン
蛋白質の一種であり、免疫グロブリン(抗体)はグロブリン中のγ-グロブリンに含まれています。
造血について
現在の医学では血液は成人になると骨髄で作られるとされています。
ただし、腸管で作られるとする「千島学説」を主張する人も根強くおり、こちらにも説得力があるのでこの説も捨てきれないと個人的には思います。
ここでは、現代医学の定説である骨髄での造血について解説します。
造血の場である骨髄
造血の場は成長とともに変化します。
胎児期には肝臓や脾臓で造血が行われ、次第に骨髄へ移っていきます。
乳幼児期にはほとんどすべての骨髄で造血が行われ、成人になると頭蓋骨、胸骨、肋骨、椎骨、骨盤、大腿骨など体幹部の骨髄でだけ行われるようになります。
造血幹細胞
造血幹細胞はすべての血液細胞に由来します。
この造血幹細胞は自身を複製しあらゆる血球(赤血球、血小板、白血球)に分化することができます。
Original Update by パタゴニア
造血因子
造血幹細胞からの分化・増殖は造血因子により行われます。
エリスロポエチン(EPO)
赤芽球系細胞の分化・増殖を促進します。腎尿細管周囲の間質細胞により産生されます。
※赤芽球とは赤血球への成熟過程にある細胞で骨髄中にのみ存在します。
トロンボポエチン(TPO)
巨核球系細胞の分化・増殖を促進します。肝細胞により産生されます。
※巨核球とは血小板を産出する細胞で骨髄中にのみ存在します。
Stem cell factor(SCF)
造血幹細胞の自己複製・骨髄系細胞への分化・増殖を促進します。
骨髄ストローマ細胞により産生されます。
GM-CSF
骨髄系前駆細胞から顆粒球単球系・好酸球系・好塩基球系への分化・増殖を促進します。
T細胞、マクロファージなどにより産生されます。
G-CSF
好中球系細胞の分化・増殖を促進します。
単球、骨髄ストローマ細胞などにより産生されます。
M-CSF
単球・マクロファージ系細胞の分化・増殖を促進します。
単球、骨髄ストローマ細胞などにより産生されます。
インターロイキン(IL)
様々な前駆細胞や血球への分化・増殖を促進します。
T細胞、マクロファージ、骨髄ストローマ細胞などにより産生されます。
参考文献
「病気がみえる vol.5: 血液」
医療情報科学研究所 (編集)