がん(癌)の原因や発がん物質、がん発生のメカニズムなどについて西洋医学(現代医学)における見解を解説します。
目次
がんはどのように生じるか 西洋医学(現代医学)における見解
臓器や組織は細胞がDNA情報を元に分裂、増殖し作られます。それが終了すれば分裂・増殖することはないのですが、何らかの理由で細胞内の遺伝子に傷がついたり、分裂時にDNAのコピーミスが起こり免疫機能が対応できないと増殖が止まらなくなる場合があります。
これががん細胞であり、がんが生じるメカニズムといわれています。
また平均寿命が伸び、高齢化すればがんが発生する確率も上がるという考え方もあります。
歳を取れば免疫力も落ち、遺伝子のコピーミスが起こる確率も上がるため「加齢」が大きな発がん要因となります。
実際最もがんが発生するのは60代くらいからとなっています。
がんが体内に最初に発生し、それが進行して検査などで見つかるまでには10~15年くらいかかるとのことです。
確認されている発がん物質
発がんの原因となるものに発がん物質があります。
これらは確実なものと可能性が高いもの、発がん物質ではないかと憶測されるものまで色々あります。
「がんはなぜ生じるか」(永田親義著)には発がん物質について詳しく書かれているのでこの本を基に下記に発がん物質や発がん因子を載せます。
環境汚染で曝露するもの
アフラトキシン
環境汚染、職業で曝露するもの
アスベスト、砒素(ヒソ)化合物、煤(すす)・石炭タール[主要な発がん成分はベンツピレン]
職業で曝露するもの
ベンゼン、2-ナフチルアミン、4-アミノビフェニル、オーラミン、ベンチジン、ビス(クロロメチル)エーテル、クロロメチルエーテル、塩化ビニル、マスタードガス、イソプロピル油(イソプロピルアルコール)、クロム、ニッケル、カドミウム、赤鉄鉱(採鉱)
医薬品で曝露するもの
クロラムフェニコール、シクロフォスアミド、ジエチルスチルベストロール、メルファラン、N-N-ビス(2-クロロエチル)-2-ナフチルアミン、オキシメトロン、フェナセチン、フェニトイン
大気汚染
大気汚染は特に肺がんの大きな要因となっています。
その中でもディーゼル排気微粒子(DEP)は大気汚染の最大の原因となるものです。
放射線
レントゲンが発見したX線は医師や技師ががんにかかったことで発がん性があることが分かりました。その後ラットによる実験でX線でがんができることが確認されました。
放射性物質であるラジウムに発がん性があることはマリーキュリー(キュリー夫人)の主張により明らかになりました。
広島・長崎に投下された原子爆弾の放射能により多くの人が白血病などのがんにかかりました。
日光
日光は皮膚がんの原因ということが動物実験によっても確認されているとのことです。
ウイルス
20世紀前半はがんの原因は主にウイルスではないかと考えられていました。
ちなみに『病の皇帝「がん」に挑む』(文庫タイトル 「がん‐4000年の歴史」)によると現在は遺伝学でがんを追求していますが、これも一過性のものに過ぎず、また次の時代には新たな分野で研究が行われるだろうと著者のシッダルッダ・ムカジーは述べています。
20世紀にたくさんのがんウイルスが発見されましたが、それらは主に動物にがんを作るものでヒトがんウイルスは存在しないと考える研究者が大勢を占めるようになりました。
結局人間にがんをつくるウイルスとしては成人T白血病ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが確かに発がん性を持つと認められ、EBウイルス(EBV)、パピローマウイルスががんの原因として考えられています。
たばこ
たばこは肺がんをはじめ種々のがんの原因とみられています。
発がん物質やその疑いがあるものとして、ベンツピレン、ベンゼン、ホルムアルデヒド、ニトロソアミン、ウレタン、砒素、クロム、ニッケルなどが含まれています。(「決定版 がんのすべてがわかる本」より)
ピロリ菌
ピロリ菌は胃がんとの関わりが深いことが分かっていますが、非感染者でも胃がんを発症することはあります。
ピロリ菌は逆流性食道炎や食道腺がんを防いでいるという報告もあるので、健康な人がピロリ菌がいるというだけで除菌することは、必ずしも健康に良いとはいえません。(除菌時の抗生物質服用で多くの善玉菌が死んでしまいます)
⇒ピロリ菌は除菌しないほうがいい?検査方法や感染経路について
⇒ピロリ菌と病気
アルコール飲料
アルコールそのものは発がん物質ではありませんが、「決定版 がんのすべてがわかる本」には以下のように書かれています。
ビール、ワイン、蒸留酒などに発がん物質および発がん性が疑われる物質(アセトアルデヒド、ニトロソアミン、アフラトキシン、ウレタン、アスベスト、ヒ素化合物など)が含まれる。またアルコールは代謝によってアセトアルデヒドに変化する。喫煙により危険度が上昇。
参考文献
「がんはなぜ生じるか―原因と発生のメカニズムを探る (ブルーバックス)」
永田親義著
「決定版 がんのすべてがわかる本」
矢沢サイエンスオフィス (編集)
『病の皇帝「がん」に挑む』上下(「がん‐4000年の歴史」)
シッダールタ・ムカジー 著
「がん 生と死の謎に挑む」