動脈硬化の原因となる脂質異常やコレステロールなどについて解説します。
目次
脂質異常(高脂血症)とは
脂質異常とは血液中の脂質の量が定められた診断基準の範囲に収まっていない状態のことで、専門的には脂質代謝異常といいます。
高脂血症というのは古い言い方で、脂質の値が高いという意味で使われていましたが、現在は善玉コレステロールと言われるHDLコレステロールについては数値が低い方が動脈硬化の要因となるため、高脂血症という言葉は脂質異常症に呼び名が変わっています。
脂質とは
血液中の脂質には主に次の4種類があります。
- コレステロール
- 中性脂肪(トリグリセライド)
- リン脂質
- 遊離脂肪酸
これらの血中脂質は通常一定の量が保たれていますが、バランスが崩れると動脈硬化となり血管にダメージを与えます。
脂質異常症の診断基準
現在の診断基準はLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、中性脂肪の3つを測定した値から脂質異常があるか判断します。
下記の1つでも該当すれば脂質異常症ということになります。
- LDLコレステロールが基準値より高い
- HDLコレステロールが基準値より低い
- 中性脂肪が基準値より高い
2015年現在の日本動脈硬化学会が設定している基準値は、
LDLコレステロール | 140mg/dl |
HDLコレステロール | 40mg/dl |
中性脂肪 | 150mg/dl |
となっています。
尚、LDLコレステロールの適性値は120mg/dl未満とされており、120~139mg/dlは境界域となり、要注意ということになります。
これらの値は今後変わらないとは限らないのであくまでも目安です。
自分の数値は健康診断などの血液検査で知ることができます。
悪玉・善玉コレステロール比
最近は、LDL、HDLコレステロール比が重視される傾向があります。
LDLコレステロール/HDLコレステロール<2、が基準値なので、低いほど良いということになります。
(LDL÷HDL<2)
LDLが100の場合、HLDが50以下なら悪玉(LDL)の割合が高く危険ということです。
この比が2.5以上になると心筋梗塞を発症するリスクがあるとされています。
この値が高い人は水溶性食物繊維を多く摂ることと有酸素運動を行うことが改善につながります。
水の摂取量を見直す
水の摂取を増やすことで脂質異常症を改善できる可能性があります。
⇒水を飲むだけの健康法!病気を治す飲水法 水ダイエットの効果は?
コレステロールについて
コレステロールとは何か?
コレステロールとは人間や動物の体の中にある脂質です。
血液中以外にも体内に広く分布しています。
実際に見てみると、ろうそくのロウのような白くて柔らかい結晶だそうです。
体内で最も多いのは脳と脊髄で肝臓や脂肪組織、副腎、小腸などにも多く含まれます。
脂肪組織に含まれているということは脂肪の多い人(肥満の人)ほどコレステロールが多いということもできます。
食事のコレステロールは気にしなくていい?
コレステロールは食事によって体内に取り入れられると同時に体内の様々な臓器でも合成され、個々の細胞でも作られています。
主要な製造元は肝臓で全体の60~70%を合成しています。その他小腸や副腎、皮膚などでも作られます。
食事から取り入れるのは約30%ほどなので、大半は体内で合成されていることになります。
健康な人ならば、食事から多くコレステロールを摂ると体内での合成は減り、肝臓は余分なコレステロールを胆汁へ排泄します。
逆に食事からの摂取が足りなければ肝臓を中心にコレステロールを作りだしバランスをとります。
このことから2015年に日本動脈硬化学会及び厚生省は食事からコレステロールの摂取を制限することに意味はないと正式に発表し、それまで卵は1日1個までなどと言われていたコレステロールの摂取基準が撤廃されました。
ただし脂質異常症の人はこれまで通りコレステロールを多く含有している食材は食べ過ぎないよう注意する必要があります。
コレステロールを多く含む食材
卵(鶏卵。特に黄身)、うずら卵、いか、たこ、うなぎ、あん肝、たらこ、かずのこ、すじこ、ししゃも、鶏・豚・牛のレバーなど。
特に卵の黄身に多く含まれているため、マヨネーズ、ケーキやシュークリーム・プリンなどの卵を使ったお菓子、揚げ物の衣なども脂質異常のある人は注意したほうがよいでしょう。
(白身にはほとんど含まれていません)
体に欠かせないコレステロールの役割
コレステロールは生命を維持するのに欠かせない重要な物質です。
次の3つの役割があります。
細胞膜の構成成分になる
コレステロールの最も重要な役割でもあり、足りなくなると細胞膜が弱くなりウィルスなどの外敵の侵入を食い止められなくなることも考えられます。
ホルモンの材料になる
副腎皮質ホルモンや性ホルモンなどのステロイドホルモンの材料になります。
体にとって非常に大切なホルモンです。
胆汁酸の材料になる
胆汁酸はコレステロールを材料にして肝臓で合成される消化液である胆汁の主成分です。
食事で摂った主に脂肪の消化、吸収を助けます。
リポタンパクと善玉・悪玉コレステロール
コレステロールそのものに善玉や悪玉という種類があるわけではありません。
コレステロールなどの脂質が体内で移動するときはリポタンパクという形で運ばれます。
リポタンパクとは
リポタンパクは水になじみやすいアポタンパクや、水に溶けやすく水と脂肪との中間の性質を持つリン脂質に包まれた球状の脂質の集まりです。
リポタンパクの構造
Original Update by AJC ajcann.wordpress.com
LDLやHDLというのはこのリポタンパクの種類を表しています。
リポタンパクの4つの種類
LDL | コレステロールを沢山積んで必要な所に運びます。中性脂肪は少なく、細胞に到着すると丸ごと細胞に取り込まれます。 |
HDL | 全身の細胞で余ったコレステロールを回収して肝臓に運びます。肝臓に運び込まれたコレステロールは胆汁やホルモンの材料となります。 |
VLDL | 中性脂肪を約5割、コレステロールを約2割積んでいます。 肝臓から脂肪組織や筋肉に運んだ後はLDLに変わります。 |
カイロミクロン | 小腸から肝臓に主に中性脂肪を運びます。 約8割が中性脂肪でたんぱく質はわずかです。 |
以上のように、LDLはコレステロールを沢山運ぶことから悪玉扱いされ、HDLは回収することから善玉とされていますが、どちらのリポタンパクも体にとっては同じように大切なものです。
超悪玉コレステロール「オキシステロール」
動脈の壁にたまったコレステロールは時間が経つと活性酸素と結合し、酸化して「オキシステロール」に変化します。
このこのオキシステロールこそ動脈硬化を悪化させる超悪玉といわれています。
オキシステロールには炎症を起こす性質があり、細胞を壊して老化させてしまいます。
酸化を促す活性酸素は喫煙やストレス過多、不規則な生活などの不摂生が原因となり増加します。
参考文献
「脂質異常の最新治療」
石川 俊次 著
「図解でわかる動脈硬化・コレステロール」
白井 厚治、 大越 郷子 著