分娩、陣痛、破水、胎盤剥離など、出産の経過ついて解説します。
目次
分娩とは
分娩は、胎児と胎盤などの付属物を排出(娩出)し、妊娠を終了する過程のことをいいます。
医学的には1時間に陣痛が6回以上規則的に起こった時点で分娩開始とし、胎児と共に付属物がすべて娩出された時点で終了となります。
正常な分娩の過程
出産(分娩)の兆候・前兆
出産(分娩)の1ヶ月前位は胎児に胃が圧迫され、ムカつきや吐き気を訴える人が多いですが、出産が近づくと胎児が下降し頭が骨盤内に移動することで胃の圧迫が和らぎ、スッキリした感覚になります。
この移動により胎児の動きは制限されるため胎動は減ります。
胎児の下降により膀胱が圧迫されるため、頻尿になる傾向があります。
不規則な陣痛(前駆陣痛)により腹部に張りを感じます。
胎児の頭が圧迫するため恥骨に痛みを感じます。
帯下(おりもの)が増加します。
産徴(さんちょう:おしるし)と呼ばれる血性の帯下(おりもの)が分泌されます。
※上記は一般的にみられる傾向であり、個人差があるため、すべて起こるわけではありません。
子宮頸管の熟化
妊娠中は胎児を子宮内にとどめるため子宮頸部は十分な強度がありますが、出産が近づくと子宮頸部は柔らかくなってきます。(頸管の熟化)
分娩の開始
陣痛が規則的になり1時間に6回以上の陣痛が起こります。
子宮口の開大
子宮口が開大し始めます。陣痛の間隔は短くなり痛みも増します。
破水
陣痛の間隔はさらに短くなり痛みが最も強くなります。
子宮口は全開大となり破水が起こります。
胎児の娩出
胎児の娩出(出産)と共に陣痛が消失します。
胎盤の娩出
後陣痛が起こり、胎盤が娩出されます。
子宮は妊娠前の状態に戻り始めます。
陣痛とは
陣痛とは子宮筋の収縮時に起こる痛みのことです。
子宮の収縮と腹圧により胎児を押し出す力が働きます。
陣痛には周期があり、痛みを伴う陣痛発作と痛みの無い陣痛間欠を繰り返します。これを陣痛周期といいます。
陣痛の種類
胎児を押し出す分娩陣痛が陣痛の主な役割ですが、その他にも以下のような陣痛があります。
妊娠陣痛
妊娠中に起こる軽い陣痛を妊娠陣痛といいます。また、分娩開始に先行して起こる陣痛を前駆陣痛といいます。
分娩陣痛
分娩開始から分娩終了までに起こる陣痛を分娩陣痛といいます。
分娩陣痛には子宮口を開大させる開口前陣痛、胎児を押し出す時に起こる娩出期陣痛、胎盤や卵膜、臍帯を娩出するときに起こる後産期陣痛があります。
後陣痛
産褥期(さんじょくき:妊娠・分娩により起こった母体や生殖器の変化が分娩の終了から妊娠前に戻る時期)に不規則的に起こる陣痛を後陣痛といいます。
破水とは
陣痛が強くなるということは子宮内圧の上昇を意味します。
これに伴い胎児の頭が下降することで卵膜が圧力に耐えられなくなると胎胞(外子宮口の方向に羊水が流入して卵膜が隆起してできる)が破綻し溜まった羊水が流出します。これが破水です。
分娩開始以前に破水してしまうものを前期破水といいます。
分娩開始後、子宮口全開大になる前に破水してしまうものを早期破水といい、子宮口全開大の頃に破水するものを適時破水といいます。
胎盤剥離とは
出産後、子宮筋層が収縮することで胎盤が剥がれ排出されます。
このときの痛みが後陣痛です。
胎盤が剥離せず出てこない場合、子宮底マッサージや胎盤圧出法などにより剥離を試みます。それでも無理な場合、超音波検査にて剥離徴候が無ければ、胎盤用手剥離(膣内に直接手を入れ、胎盤剥離を試みる)を行います。
胎盤用手剥離で剥離しない場合は癒着胎盤として温存または手術となります。
⇒前置胎盤、常位胎盤早期剥離、癒着胎盤の原因、症状、治療について
参考文献
「病気がみえる vol.10: 産科」
医療情報科学研究所 (編集)