耳垢(みみあか/じこう)、耳かき・耳掃除に関する問題についてです。
目次
耳垢のタイプ 乾性耳垢と湿性耳垢
耳垢には大別して2つのタイプがあります。
乾いていてかさかさした乾性耳垢と、ねばねばした湿り気のある湿性耳垢です。
成分自体は同じですが、湿性タイプは油脂成分の分泌が多く、その分、量も多くなります。
湿性か乾性かは遺伝によって決まるので、変えることはできません。
日本人の8~9割は乾性耳垢ですが、世界的には湿性耳垢の人の方が多いです。
耳垢には役割がある
耳垢は不要な排泄物というわけではありません。
最近の研究では耳垢には耳を守る役割があると考えられています。
抗菌作用がある
多過ぎる耳垢は細菌を繁殖させてしまう可能性がありますが、適度に外耳道に付着した耳垢は皮膚を守り、外耳炎(外耳道炎)を防いでいると言われています。
すべて立証されているわけではありませんが、細菌の繁殖を抑えているという研究も報告されています。
虫の侵入を防ぐ
外耳道異物として耳に虫が入ってしまい耳鼻咽喉科を訪れる患者は決して少なくないそうです。
多いのは、蛾(ガ)、ゴキブリ、ハエ、クモなどで、これらが侵入したとき耳垢は外耳道や鼓膜を守る役割があります。
虫が耳の中に入ってしまったら
もし虫が耳に入って取れなくなったら、速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
蛾のように光に集まる習性のある虫の場合は懐中電灯で照らすと出て来ることがありますが、ゴキブリやクモは奥に潜ってしまうので逆効果です。
何の虫が入ったか分からないときは無闇に光を当てないほうがよいでしょう。
耳垢栓塞(じこうせんそく)とは?
耳垢が溜まって詰まってしまっている状態のことをいいます。
難聴や耳閉感を起こす場合があります。
外耳道には耳垢が溜まらないようにする自浄作用があり、これが正常に働いていれば、耳垢は自然に鼓膜から外側へと押し出されていく(マイグレーション)ので掃除は不要とされています。
しかし乳幼児など外耳道が狭い人やマイグレーションの衰えた高齢者、耳垢が湿性タイプの人は耳垢が溜まりやすいので耳垢栓塞に注意する必要があります。
正しい耳かき・耳垢の取り方は?
安全で正しい耳かきの方法は、耳鼻咽喉科で取ってもらう、ということになります。
自分でやる場合は思わぬリスクがあるからです。
耳垢が溜まりやすい方は定期的に病院で検査を兼ねて耳垢掃除を行うことが最も望ましい方法です。
耳垢水を使う
世界的には安全な耳掃除の方法として耳垢水を使用するのが一般的のようです。
(日本でも病院で行っています)
耳垢水は耳垢を柔らかく溶かす作用がある液体です。
日本では現在市販されていないので医師で処方してもらう必要があります。
耳垢水を点耳(耳の中に垂らす)し、時間をおいて拭きとるという作業を何度か行うのが一般的です。拭きとり用の器具(主にピストン)が必要になるなど、手間がかかります。
また鼓膜に孔があいている等の耳の病気がある人はこの方法は使えません。
耳かきの危険性
子供のそばで耳かきしているときに、遊んでいた子供が突然ぶつかるという事故は珍しくありません。
鼓膜を破るだけにとどまらず、さらに奥を傷つけてしまうということもあります。
猫が耳かきの梵天(ぼんてん=後ろについているフワフワ、主に水鳥の毛)にじゃれついてきた、などという話もあります。
道具の問題
耳かきには金属製、竹製、プラスチック製など色々ありますが、いずれにしても耳かきで掻き出すことは外耳道炎や外耳道湿疹の原因になることがあります。
綿棒は耳に入れた時に耳垢を奥に押し込んでしまい、かえって耳垢を溜めこむことになりかねないので、使わないようにしましょう。
どうしても綿棒を使いたい場合は先の細いものを使用し、耳垢を奥に押さないように注意して行います。
参考文献
「驚異の小器官 耳の科学」 (ブルーバックス)
杉浦 彩子 著