子癇、HELLP症候群(ヘルプ症候群))の原因、症状、治療について解説します。
子癇とは
妊娠高血圧症候群の妊婦が妊娠20週以降に初めてけいれん発作を起こすものです。
妊娠20週から分娩にかけて起こるものを妊娠子癇、分娩前後に起こるものを分娩子癇、分娩から産褥(さんじょく:分娩後妊娠前の状態に体が戻る期間)までに起こるものを産褥子癇といいます。
子癇の原因
10代での妊娠、初産婦、多胎、子癇の既往、HELLP(ヘルプ)症候群などは危険因子とされています。
子癇の症状
頭痛、目がかすむ・チカチカする、腹痛(上部)、などが前駆症状として起こり、続いて意識障害を伴うけいれん発作が起こります。
前駆症状が無い場合もあります。
典型例は以下のようになります。
数日から週週間前から妊娠高血圧腎症があり、前駆症状が起こります。
→突然失神し顔面蒼白となり、口元からけいれん発作が始まり数十秒間続きます。
→さらに全身性のけいれん(強直けいれん)となり呼吸が数十秒管停止します。
→目や口を激しく開閉する状態(間代性けいれん)が1~2分続きます。
→けいれんがおさまり昏睡状態となりいびきをかきます。
→覚醒しますが、発作の記憶はありません。昏睡状態のまま死に至ることもあります。
強い光や大きな音をきっかけに発作が起こることがあります。
子癇の治療
発作時の救急救命措置として気道の確保、酸素吸入、顔を横に向け誤嚥防止、舌損傷防止などが行われます。
強い光や大きな音を遮断し安静にします。
薬物治療として、けいれん防止のため硫酸マグネシウムの静注、降圧薬、鎮静剤などが投与されます。
多くは帝王切開により妊娠を中断させます。(出産させる)
HELLP症候群とは
HELLP症候群(ヘルプ症候群)のHELLPは溶血(Hemolysis)、肝酵素上昇(Elevated Liver enzyme)、血小板減少(Low Platelet)の3つの頭文字を取ったものです。
この3つの症状が多くは妊娠末期に生じ、約90%は妊娠高血圧症候群に合併します。
※溶血とは赤血球が破壊されることです。
HELLP症候群の原因
はっきりした原因は不明です。
肝動脈の攣縮(れんしゅく:けいれん性の収縮)や網内系(※)の血管内皮障害により起こる考えられています。
※細網内皮系(網内系)
免疫や食作用など、身体の防衛的な働きをする同一系統の組織。網状に連絡しあうリンパ節・脾臓(ひぞう)・骨髄・胸腺・肝臓などの細網組織系と、リンパ管・静脈血管の内面を覆う内皮細胞とからなる。
HELLP症候群の症状
突然の上腹部の痛み(上腹部痛)、疲労感、悪心・嘔吐などが起こります。
頭痛、視覚障害、黄疸、出血などがおこる場合もあります。
母体の合併症として、子癇発作、DIC、常位胎盤早期剥離、急性腎不全、肺水腫、肝出血などが起こる場合があります。
胎児の合併症として、胎児発育不全、胎児死亡、新生児死亡、早産、新生児血小板減少症、新生児呼吸窮迫症候群などが起こる場合があります。
HELLP症候群の治療
胎児が成長している場合は妊娠を終了させるため、帝王切開を行い出産させます。
胎児が未熟な場合、状態を厳重に管理し様子をみます。
ステロイドが投与される場合もあります。
参考文献
「病気がみえる vol.10: 産科」
医療情報科学研究所 (編集)