頭蓋内圧亢進、脳浮腫、脳ヘルニアなど脳血管障害に伴って起こる病態の原因、症状、治療について解説します。
目次
頭蓋内圧亢進とは
通常頭蓋内圧は60~180mmH2Oに保たれていますが、これが180mmH2Oを超えてしまった状態が頭蓋内圧亢進です。
頭蓋内圧亢進の原因
頭蓋内血腫、脳腫瘍、脳膿瘍などの病気によるものや、脳浮腫、水頭症などで脳実質や脳室の容積が拡大することで起こります。
頭蓋内に器質的問題が無いにも関わらず症状を示すものを特発性頭蓋内圧亢進症といいます。
頭蓋内圧亢進の症状
急性と慢性のものがあり、それぞれ症状は異なります。
いずれも重症化すると脳ヘルニアを起こす場合があります。
急性の場合
激しい頭痛、悪心・嘔吐
クッシング現象(除脈、血圧上昇)、意識障害、網膜出血、散瞳(瞳孔が過度に拡大する)、けいれん
慢性の場合
頭痛(睡眠明けに多い)、悪心・嘔吐、視力障害、めまい
うっ血乳頭(視神経乳頭のむくみ)、外転神経麻痺(眼球を外側に動かすことができなくなる)、記憶障害、人格変化
頭蓋内圧亢進の治療
全身管理として呼吸管理、輸液が行われます。
降圧療法として、利尿薬やステロイドの投与、バルビツレート療法、低体温慮法などが行われます。
外科的治療として状況に応じて、脳室穿刺、脳室ドレナージ、V-Pシャント、外減圧術、内減圧術、膿瘍摘出術、血腫除去術などが行われます。
脳浮腫とは
脳浮腫とは、脳組織の水分量増加により容積が増えている状態をいいます。
頭蓋内圧亢進症の原因にもなります。
通常の浮腫は細胞間質に水が溜まりますが、脳浮腫では細胞自体にも水が溜まる場合があります。
脳浮腫の原因
脳出血が最も多く、その他に脳動脈瘤、脳腫瘍、外傷、血液疾患などが原因となります。
脳浮腫の症状
頭痛、嘔吐、重症化すると意識障害などが起こります。
脳浮腫の治療
原因疾患の治療とともに、抗浮腫薬(ステロイド、グリセロール、利尿薬)が投与されます。
脳ヘルニアとは
脳ヘルニアは腫瘍や血腫などの病変により脳が本来の位置から押し出される状態をいいます。
押し出されることで、圧迫・変形が起こり様々な神経症状が起こります。
脳ヘルニアの原因
頭蓋内圧亢進、頭蓋内血腫、脳腫瘍、脳浮腫、水頭症、外傷など。
脳ヘルニアの症状
発声する部位により下記のように分類されます。
下に行くほど危険度は高くなります。(最も軽症なのが帯状回ヘルニア、危険なのは大後頭孔ヘルニア)
帯状回ヘルニア(大脳鎌下ヘルニア)
陥入組織(かんにゅうそしき:押し出される部位)が前頭葉前部のものです。
初期症状は無症状で、前大脳動脈が圧迫されることで対側(病変のある半球と逆の半身)または両側の足の運動・感覚障害が起こります。
テント切痕ヘルニア
上行性と下行性があります。
下行性ヘルニア
鉤ヘルニア、海馬ヘルニア、正中ヘルニアがあります。
圧迫される部位により様々な症状が起こりますが、ここでは重要な初期症状を記載します。
鉤ヘルニア、海馬ヘルニア
鉤ヘルニアは陥入組織が側頭葉内部の鉤、海馬ヘルニアは海馬が陥入するものです。
初期症状は病変側の動眼神経麻痺による瞳孔散大(瞳孔が5mm以上に開く)、対光反射消失(光に対する瞳孔の反射が無くなる)など。
正中ヘルニア
陥入組織は側頭葉内部、間脳、中脳です。
初期症状は間脳の圧迫による注意力低下、傾眠、両側縮瞳などです。
上行性ヘルニア
陥入組織は小脳虫部です。
中脳の圧迫により瞳孔異常、眼球運動障害、意識障害、呼吸障害などが起こります。
大後頭孔ヘルニア
陥入組織は小脳扁桃です。
延髄の圧迫により急激な意識障害や呼吸停止が起こります。
大後頭孔部硬膜への刺激により項部(こうぶ:うなじの辺り)硬直が起こります。
参考文献
「病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経」
医療情報科学研究所 (編集)