自然分娩(自然出産)するための理想的な病院の紹介や通常の病院との違い、無痛分娩をしてはいけない理由、理想的な出産準備についてなどです。
「幸せな自然出産のすすめ」「お産!このいのちの神秘」(共に吉村正著)を読むと、自然出産が通常の病院出産と大きく違い、母子の心身の健康にとても良いことが分かります。
著者である吉村先生が院長を務める吉村医院は出産のための理想的な病院と言えるでしょう。
現在、病院で出産することが普通になっていますが、大半の病院は医療介入を行い、病院主導での出産が行われます。
⇒本当は怖い!出産を病院で行うことの危険性と医療の問題点
自然分娩ができなくなった理由は病院のせいばかりではなく、現代人は運動不足や食生活が良くない為、自力で産む力が弱くなっていることも挙げられます。
目次
自然分娩・自然出産とは
自然出産と自然分娩は同じ意味ですが、ここでは本に準じて自然出産という言葉を用います。
通常病院で行われる分娩では会陰切開、吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開、陣痛促進剤の使用等が行われ、主導権は医師にあります。
これに対して自然出産は医師に頼らず、自然に起こる陣痛や子宮の収縮など女性本来の力で産道を通して産むことをいいます。
自然出産で生まれた赤ちゃんの特徴
一般の病院出産では赤ちゃんは手をギュッと握り、目をつぶってオギャー、オギャーと泣いて出てきます。
自然なお産では赤ちゃんはのんびりした顔で生まれてくるとのことです。
産婦にストレスがかからないと赤ちゃんも安心しているので、赤ちゃんも泣き叫ぶようなことはなく、産声はほとんど無い、あるいは泣かない子までいるそうです。
また、元気がよく、呼吸や心拍数などの数値も良いとのことで、仮に仮死状態で生まれてきても、背中をこするなどの刺激で回復してしまうことが多いということです。
出産直後に異常が無ければ母子を切り離さないので、最初の段階で母子の強い絆を作ることができます。
医療介入による恐怖を味合わないので、臆病にならない傾向があるようです。
出産直後に安心しているのと、恐怖を感じるのとでは、その後の性格形成に大きな違いが出てくるでしょう。
自然出産をするために必要なこと
自然に出産するためには、妊婦はそれなりの体力が必要となります。
体力が無いから一般の病院で医師に手伝ってもらわなくてはいけないと考えるべきかもしれません。
ですので、自分の体力に自信がなく、妊娠してからでも頑張ろうと思えない人は自然出産は諦めたほうがよいでしょう。
吉村先生は、ゴロゴロ、バクバク、ビクビクしないことが大切と述べています。
ゴロゴロとは運動せず寝てばかりいること、バクバクは食べ過ぎ、ビクビクは必要以上に怖がることです。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の原因もゴロゴロ、バクバク、ビクビクするような生活を送っていることにあると吉村先生は言います。
母子の生命力を高める運動
自然出産のためには妊娠初期(本当は妊娠前)からしっかり運動します。
早産傾向にならないためにもスクワットやウォーキングなどの運動が勧められます。
母体の生命力が強まれば子宮は赤ちゃんをしっかりとどまらせて育もうとするため、早産を避けることができるとのことです。
一般の病院だと早産傾向がみられたら早々に子宮の収縮を抑える注射を打たれてしまうことがありますが、吉村医院では体力をつけることが優先とのことです。
吉村医院には「古屋」と呼ばれる自然に囲まれた別棟の建物があり、そこで古典的な家事である薪割り、水汲み、雑巾がけなどを行うようになっています。他の妊婦との交流もできストレスを抱えることがないようになっています。
1日にウォーキング2時間、スクワット300回という徹底した運動と家事で自然出産に耐えられる体を作ります。
高齢出産などリスクを抱えた人の場合
吉村医院では40歳を超えた人の出産も多いそうです。
高齢出産や双子の出産のようにリスクを抱えた人は、通常の病院では帝王切開を勧められる場合もありますが、吉村医院では他の妊婦よりも沢山の運動をすることやしっかりした食事をすることなどの指導を受け、自然出産に臨みます。
リスクのある出産には十分な心構えと、高齢の人は若い人の2倍くらい運動する覚悟が必要であるとのことです。
妊娠中の食事について
自分と赤ちゃんの二人分食べなくてはいけないという考えは間違いだそうです。
体重が増えすぎるとお産はスムーズにいかなくなります。
自然なお産のためには和食で粗食にすることが大切です。旬の食材を食べる、食べ過ぎないということが基本です。
和食中心になるため、肉類や卵、乳製品を避けるメニューになります。
カタカナの食品名は洋食であることが多いので必然的に摂らないことになります。
当然インスタント食品やファーストフードなどはNGです。
体重はプラス8kgが目安で6~10kg増という範囲に抑えるようにします。
例として夕食の献立は、ごはんにわかめの味噌汁、煮魚と野菜炒め、という感じになります。
不安や恐怖心を抱えない
妊娠中に余計な情報を聞いて不安を覚えたりビクビクするとよいお産ができなくなります。
こういうときこそ夫の協力が大切になるとのことです。夫は妻がリラックスできるように配慮する必要があります。
吉村医院では同じ境遇の妊婦同士でお喋りする機会も多く、ストレスを和らげることができます。
また妊娠すると体調に変化が現れるのは当然のことでそれを必要以上に恐れないようにします。吉村医院では少々の貧血くらいでは薬は使わないそうです。
好きな姿勢・場所で産む
吉村医院の分娩室は畳の和室で、産婦が落ちつけるように明かりは行灯(あんどん)のような小さなものです。暗い部屋だとストレスが少なくリラックスできます。
ここで好きな姿勢、好きな場所で出産が可能です。
人によってその時の楽な姿勢を取るので、ある人は四つん這い、ある人はご主人につかまりながら、クッションにしがみついたり立ちあがってみたり、痛みを逃すために動き回ったりと色々です。
直前にとっさに立ち上がって産んでしまう人もいます。
また、吉村先生は自由に声を出すことを奨励しているので、みな大声で獣のような声をだして出産するそうです。
開放的に声を出すことでお産がスムーズに進む効果があり、逆に我慢してしまうと分娩も抑制してしまうとのことです。
万一の場合は分娩台のある分娩室もあるので、安全性はとても高い環境です。
無痛分娩をしてはいけない理由、陣痛の意味とは?
陣痛は出産前のやっかいな症状と思っている人が多いでしょう。
無痛分娩をする人や無痛分娩にするかどうか悩んでいる人はとても多いと思います。
しかし陣痛を薬で抑えてしまうのはリスクがあるだけでなく、陣痛が何のためにあるのか分かっていないからです。
陣痛は赤ちゃんが陣痛を起こすホルモンを出し、それをお母さんが受け取ることで体が陣痛を起こします。
つまり陣痛は赤ちゃんとの最初の会話ということになります。
これを無痛にしてしまうということは、赤ちゃんとのコミュニケーションを遮断して無視してしまうという意味になります。
赤ちゃんは自分が生まれるタイミングを、もうそろそろだ、やっぱりもうちょっと待って、と陣痛で伝えてきます。ですからこの対話を楽しめるということも、自然出産の利点であり、陣痛は怖いものではないということが分かります。
陣痛促進剤を使うと陣痛がとても痛い場合があります。なぜなら薬で赤ちゃんをせかしているわけですから、陣痛が赤ちゃんの悲鳴になってしまうのです。
陣痛促進剤を使うと子宮が破裂することがあるくらいですから当然です。薬を使ってしまえば、もはや陣痛はコミュニケーションではなく、警報のようなものでしょう。
⇒陣痛促進剤 子宮収縮剤の副作用、計画分娩 誘発分娩のリスクとは?
微弱陣痛も母子が出産準備を整えている時間であり必要なことだそうです。この間に体内で出産のための様々な調整が行われるとのことです。
また不安や恐怖心が強い人は微弱陣痛なりやすいので、緊張を和らげるそうですが、どうしても無理な場合に陣痛促進剤を少量使うことはあるそうです。
逆子でも大丈夫
通常逆子の場合帝王切開が勧められる場合が多いですが、吉村医院では帝王切開せずに自然に生まれてくるそうです。
体力づくり、正しい食事、リラックスした精神状態を保つ、といった出産準備をしっかりしておけば逆子でも引っかからずに出てくるとのことです。
そして、どういうわけか最初に足から出てくる赤ちゃんは、ほとんどの場合、両腕を胸の前に交差して、あごをぐっと引き、頭が引っかからないようなかっこうをして生まれ出てきます。
吉村医院では逆子でも98%が自然なお産で生まれ、その数は700例を超えるということです。
こういう難しいお産でも先生をはじめスタッフが根気よく待って対応してくれるということが産婦の精神状態の安定につながり、それが赤ちゃんにも伝わることで困難を乗り越えることができるのでしょう。
まとめ
吉村医院での出産は、畳の部屋で家族が見守り、助産師さんが寄り添ってサポートしてくれます。先生は万一に備えて部屋のすみでひたすら見守ります。
お産が深夜や休日になっても変わりません。
本を読むと先生が女性を凄く尊重していることが伝わります。
妊婦さんは安心して出産することができるでしょう。
自然出産で生まれた子は落ち着いていることが多く、安心して生まれた子は性格も安定してくるようです。
普通の病院出産の後、もう子供を産むのが嫌になってしまうという人も多いそうですが、吉村医院で出産した人は、楽しかった、子供をもっと産みたい、という気持ちになる人が多いそうです。
自然出産がただ健康面に良いというだけでなく、母子の心理面への影響が多大であり重要だということが著書を読むとよく分かります。また、親子関係、家族の絆というものを大切に考えるならその土台となる出産についてもっとよく考えてみなくてはいけないと思わされます。
参考文献
産む力を高める 幸せな自然出産のすすめ | ||||
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お産!このいのちの神秘―二万例のお産が教えてくれた真実 | ||||
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