卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の原因、症状、治療について解説します。
卵巣過剰刺激症候群とは
卵巣過剰刺激症候群(OHSS:Ovarian hyperstimulation syndrome)は不妊治療で行う排卵誘発法によって多数の卵胞が発育し、卵巣腫大、腹水・胸水の貯留などが起こる治療の副作用的な病気です。
「不妊治療を考えたら読む本」の著者である浅田先生によると、OHSSが起きやすい人は 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の人、若い人、痩せている人、過去にOHSSを起こしている人だそうです。
不妊治療の際はもちろんOHSSを防ぐために細心の注意をしていますが、それでも完全に防ぐことは難しいようです。
卵巣過剰刺激症候群の原因
卵巣刺激のためのゴナドトロピン療法(hMG/FSH-hCG療法)が原因となります。
hMG製剤により多数の卵胞が発育し、卵巣の腫大が起こります。
hCG製剤により血管透過性が亢進し、血漿成分が漏れ出し腹水・胸水の貯留や血液濃縮凝固系の異常、電解質の異常、腎臓の血流低下などが起こります。
卵巣過剰刺激症候群の症状
腹部膨満感(お腹が張る)、悪心、嘔吐、乏尿(尿量が少なくなる)、急な体重増加、呼吸困難などが起こります。
重症化すると、血栓症による脳梗塞、腫大した卵巣による茎捻転、急性肝不全、急性腎不全、急性呼吸促迫症候群、播種性血管内凝固などを起こす場合があります。
卵巣過剰刺激症候群の治療
輸液(水分や電解質を点滴する)、アルブミン投与、低用量ドーパミン持続投与などが行われます。
胸水が溜まったことで呼吸困難が起こっている場合、穿刺し貯留液の排出を行います。
茎捻転を起こした場合、手術が行われる場合があります。
妊娠していない場合は、自然治癒することが多いですが、妊娠している場合症状がさらに重症化します。
参考文献
「病気がみえる vol.9: 婦人科・乳腺外科」
医療情報科学研究所 (編集)
『不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」』
浅田 義正、河合 蘭 著