前立腺とは何か、急性前立腺炎、慢性前立腺炎の原因、症状、治療について解説します。
前立腺とは
前立腺は男性の膀胱の下に位置する生殖器の一つであり、尿道を取り囲むように存在する栗の実大の腺組織です。
「腺」は何らかの物質を分泌する細胞の集まりを意味します。前立腺は主な働きとして前立腺液を分泌します。前立腺液は精液の約3割を占める液体で、精子を活性化させる働きがあります。
前立腺の働きはまだ解明されていない部分も多く「未知の臓器」と呼ばれるることもありますが、前立腺液の分泌以外に、排尿のコントロールを行っていると考えられています。
前立腺炎とは
前立腺炎とは前立腺に生じた炎症のことです。
現在は以下の4つにカテゴライズされています。
カテゴリーⅠ:急性細菌性前立腺炎(急性前立腺炎)
カテゴリーⅡ:慢性細菌性前立腺炎(慢性前立腺炎)
カテゴリーⅢ:慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)
カテゴリーⅣ:無症候性炎症性立腺炎
急性前立腺炎(急性細菌性前立腺炎)
前立腺に生じる細菌感染症です。原因菌としては大腸菌が最も多くなっています。
尿検査にて膿尿(のうにょう:白血球が混ざった尿)、細菌尿の有無で診断されます。
前立腺自体に腫れや熱感、圧痛(圧迫すると痛む)などがあります。
急性前立腺炎(急性細菌性前立腺炎)の原因
尿道から上行感染する経路と膀胱炎から下行感染する経路、血液やリンパ液から感染する経路あるとされています。最も多いのは尿道からの上行感染です。
またカテーテル(治療用の柔らかい管)を留置している高齢男性に起こることもあります。
急性前立腺炎(急性細菌性前立腺炎)の症状
発熱(高熱)、悪寒、戦慄、排尿痛、頻尿などが起こります。
急性前立腺炎(急性細菌性前立腺炎)の治療
抗菌薬・抗生剤(ニューキノロン系、セフェム系、アミノグリコシド系など)の投与が行われます。
慢性前立腺炎
慢性前立腺炎には、慢性細菌性前立腺炎と慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)の2つがありますが、そのほとんどは慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)です。
前立腺自体には特に異常を認められないことが多いです。発熱などのはっきりした症状が無く、不定愁訴(ふていしゅうそ:何となく体調が悪い、前立腺周辺の違和感など)のみが続きます。
尿検査にて膿尿(のうにょう:白血球が混ざった尿)が確認され、細菌尿があるものが慢性細菌性前立腺炎、無いものが慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)です。
前立腺マッサージによる前立腺液の検査なども行われます。(急性前立腺炎で行うことは不可)
慢性細菌性前立腺炎の原因
細菌感染が原因です。
慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)の原因
微生物の関与、骨盤底筋群の過緊張、精神的要因などが原因と考えられています。
慢性前立腺炎の症状
症状は乏しく、会陰部(えいんぶ:陰嚢と肛門の間)の不快感、排尿時違和感などが起こる場合があります。
慢性細菌性前立腺炎の治療
抗菌薬・抗生剤の投与が行われます。
慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)の治療
原因に応じて、α1受容体拮抗薬の投与、前立腺マッサージ、カウンセリングなどが行われます。
無症候性炎症性立腺炎
症状が無く、原因不明の前立腺炎です。
諸々の検査にて尿中に白血球が認められた場合や、前立腺生検(生検は組織を部分的に採取して調べること)などで発見されたものは、無症候性炎症性立腺炎に分類されます。
参考文献
「病気がみえる vol.8: 腎・泌尿器」
医療情報科学研究所 (編集)