腎盂腎炎(腎盂炎)、急性腎盂腎炎(急性単純性腎盂腎炎)、慢性腎盂腎炎(慢性複雑性腎盂腎炎)の原因、症状、治療について解説します。
目次
腎盂腎炎とは(腎盂炎とは)
腎実質(腎臓そのもの)、腎盂、腎杯に細菌が感染して起こる病気です。経過の違いにより急性と慢性があり、さらに基礎疾患の有無により単純性と複雑性に分類されます。
診断は血液検査や尿検査により行われます。
Original Update by Piotr Michał Jaworski; PioM EN DE PL
6-腎盂(腎盤) 8-腎杯
その他は「泌尿器 腎臓の位置 腎臓の働き 尿管 膀胱 尿道 排尿メカニズムについて」を参照してください。
急性腎盂腎炎(急性単純性腎盂腎炎)
尿路に基礎疾患の無い人に起こる腎盂腎炎を急性単純性腎盂腎炎といいます。性的活動期(10~50歳位)の女性に多くみられます。
急性腎盂腎炎(急性単純性腎盂腎炎)の原因
主な原因菌は大腸菌です。女性は男性に比べ尿道が短い為膀胱炎にかかりやすく、膀胱炎が起こってからの上行感染(※)で急性単純性腎盂腎炎になることがありますが、膀胱炎の症状は現れないこともあります。
※上行感染とは尿道から侵入した細菌が上へさかのぼって腎盂に到達するもので、急性単純性腎盂腎炎の原因のほとんどを占めます。
稀に血管から細菌が侵入する血行性感染やリンパ管から感染するリンパ行性感染の場合もあります。
ストレスや疲労などで免疫力が低下していると細菌による感染が起こりやすくなります。性行為により尿路に細菌が押し込まれることもあります。
急性腎盂腎炎(急性単純性腎盂腎炎)の症状
発熱(高熱)、悪寒、戦慄、腰背部痛などが起こります、悪心・嘔吐などの症状や膀胱炎の症状が先に現れることもあります。
急性腎盂腎炎(急性単純性腎盂腎炎)の治療
抗菌薬(抗生剤)の投与により治癒しやすいです。また水分を摂取して排尿を促進するようにします。
慢性腎盂炎(慢性複雑性腎盂腎炎)
慢性腎盂腎炎は尿路に基礎疾患のある複雑性腎盂腎炎であることが多く、男女を問わず子供や高齢者に多くみられます。
尿路の基礎疾患とは、先天性の尿路の奇形や腫瘍、結石、カテーテル留置、前立腺肥大症、膀胱尿管逆流症などです。
症状は軽い場合が多いのですが、放置すると腎機能が低下し腎臓の萎縮や瘢痕化(はんこんか:組織の欠損が不完全に修復された状態)が起こる場合があります。
慢性尿細管間質性腎炎の原因となり、腎不全に至る場合もあります。
慢性腎盂炎(慢性複雑性腎盂腎炎)の原因
基礎疾患があるため尿路の感染防御機構が十分ではなく、細菌が容易に定着・増殖してしまいます。
原因となる細菌は、大腸菌、緑膿菌、腸球菌などで複数の菌が感染することもあります。
慢性腎盂炎(慢性複雑性腎盂腎炎)の症状
微熱、軽度の腰背部痛などですが、自覚症状が無い場合もあります。
急性発症や急性増悪が起こった場合、急性腎盂腎炎と同様の強い症状が現れます。
慢性腎盂炎(慢性複雑性腎盂腎炎)の治療
急性経過時や発熱がある場合は抗菌薬(抗生剤)が投与されます。
基礎疾患の治療が重要となります。
参考文献
「病気がみえる vol.8: 腎・泌尿器」
医療情報科学研究所 (編集)