バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症と無痛性甲状腺炎、甲状腺中毒症について解説します。
目次
バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症
甲状腺機能性結節(プランマー病)
脳の直下にある下垂体からの指令なしに甲状腺ホルモンを作ってしまう結節(コブのようなもの)が甲状腺にできます。
結節は段々大きくなり、ホルモンを作りだし、結果として機能亢進症が起こります。 パセドウ病と違い遺伝性は無いとされています。
※甲状腺ホルモンの分泌は下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)により調節されています。
甲状腺機能性結節(プランマー病)の症状
症状はパセドウ病の機能亢進によるものと同様ですが眼球突出は起こりません。
程度はパセドウ病よりも軽い場合が多いようです。
パセドウ病の機能亢進による症状
甲状腺機能性結節(プランマー病)の治療
手術で結節を切除するか、PEIT(ペイト)と呼ばれるエタノールを患部に注射する方法で治療します。 最近は手術よりもPEITが治療の主流になりつつあります。
亜急性甲状腺炎
「亜急性」とは急性と慢性の間という意味です。 甲状腺が原因不明のウィルスに感染し炎症を起こす病気です。
炎症のため甲状腺が傷つき、蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出すことで甲状腺機能亢進症が起こります。
亜急性甲状腺炎の症状
発熱や喉の痛みなど風邪とよく似た症状が出ます。
その後、甲状腺に痛みを伴う硬い結節(しこり)ができます。
機能亢進が起こる為バセドウ病と同様の症状も出ます。
蓄えていたホルモンが出てしまった後、今度はホルモンの不足が起こり機能低下症の症状が出ます。
喉の痛みがバセドウ病と異なるこの病気の特徴です。
亜急性甲状腺炎の治療
原則的には治療せず経過観察し自然治癒を待ちます。 放置していても自然に治る病気ですが、痛みが強い場合は鎮痛剤やステロイド剤を使用することがあります。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生腫
甲状腺ホルモンの分泌は下垂体からでるホルモン(TSH)により調節されています。
その下垂体の前葉に良性の腫瘍ができ、TSHの分泌が増える為、甲状腺ホルモンが過剰に作られ甲状腺機能亢進症が起こります。
甲状腺刺激ホルモン産生腫の症状
甲状腺機能亢進症が起こるためバセドウ病と同様の症状となります。
甲状腺刺激ホルモン産生腫の治療
抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンの濃度を正常にした後、手術で腫瘍を摘出します。
全摘出が困難な場合は薬や放射線を用いた治療を行います。
無痛性甲状腺炎
甲状腺機能亢進症ではありませんが、症状がバセドウ病と良く似ていて間違えられやすい病気です。
甲状腺に急な炎症が起こり細胞が破壊され、甲状腺の中に蓄えられていたホルモンが漏れ出しまう為、血中のホルモン濃度が高まり中毒症となります。
甲状腺中毒症の一種
甲状腺中毒症とは、血液中の甲状腺ホルモンが過剰となり全身の代謝が高くなり過ぎている状態です。
無痛性甲状腺炎の原因
原因は不明ですが、自己免疫疾患の可能性が高いとされています。
無痛性甲状腺炎の症状
バセドウ病の症状と似ています。 ただし首の腫れが大きくなることは稀(まれ)で、眼球突出もありません。
無痛性甲状腺炎の検査
症状がバセドウ病と似ている為、間違われやすい病気ですが、ヨード摂取率の検査をすることでほぼ判断できます。
無痛性甲状腺炎の治療
治療をしなくても数ヶ月で治る病気です。 そのためバセドウ病との誤診に注意する必要があります。必要のない抗甲状腺薬を服用し、自然治癒が薬による治癒と混同されると色々やっかいになります。
無痛性甲状腺炎が治るまでの過程
無痛性甲状腺炎は漏れ出たホルモンによる甲状腺中毒の症状が出た後、やがてホルモンのストックが無くなり漏れも止まります。
すると甲状腺機能低下症の症状が現れますが、その状態も過ぎるとホルモンは正常に戻ります。
中毒症の時期は一般に2~3ヶ月で、機能低下症の症状は1~6ヶ月くらいと個人差があります。 自然治癒した後、半年~10年の間隔をおいて再発する傾向があります。
甲状腺中毒症
亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎を破壊性甲状腺中毒症と呼ぶことがあります。 また、甲状腺機能亢進症と破壊性甲状腺中毒症を総称して甲状腺中毒症と呼びます。
西式甲田療法
西式甲田療法では、原因不明の病気や自己免疫疾患が完治した例が多数報告されています。
専門家へ相談してみることをお勧めします。
⇒難病 原因不明の病気が治る西式甲田療法とは 少食 断食の効果について
参考文献
甲状腺の病気の最新治療―バセドウ病・橋本病・甲状腺腫瘍ほか (よくわかる最新医学) 伊藤 公一 監修