結核とは何か、肺結核、粟粒結核の症状、検査、治療や抗結核薬の副作用について解説します。
結核とは結核菌に感染することで発病する病気です。
ただし感染=発病ではありません。 約9割の感染者は免疫で抑制され生涯を通じて発病しません。
感染後すぐの発病を一次結核といい、感染から時間をおいて発病するものを二次結核といいます。二次結核の発病までの期間は数十年に及ぶこともあります。
目次
肺結核とは
結核菌による感染症の約8割は肺結核です。
それ以外の結核を肺外結核といいます。
一次結核、二次結核共にストレスが多い生活などで免疫が弱っていると発病する恐れがありますが、一次結核は赤ちゃんや若年者に多く見られ、二次結核は高齢者や成人に多い傾向があります。
肺結核の原因
感染は空気感染によるものです。
感染により保菌者となっても多くは免疫により自然治癒します。
ただし結核菌が死なずに肺の中で冬眠状態となっていることがあります。
保菌者の場合、体が元気な状態であれば免疫の働きにより結核菌の分裂増殖を抑制します。しかし高齢になって他の病気にかかるなど、体が弱ってくると結核菌が分裂増殖し発病する可能性があります。
肺結核の症状
2週間以上続く咳が主な初期症状となります。
微熱や痰が出ることもあります。
進行すると免疫の結核菌に対する攻撃により肺の組織が次第に壊されていきます。 そうなると、血痰が出たり、胸痛や呼吸が苦しいといった症状が現れます。 また栄養障害により体重が減少します。
肺結核の検査
感染を調べる検査として、ツベルクリン検査やQFT検査(血液検査)があります。
発病を調べる検査には、胸部X線撮影、CT検査、痰を調べる塗抹検査(とまつけんさ)、培養検査などがあります。
QFT検査とは
以前はツベルクリン検査が主流でしたが、過去にBCG接種を受けていると陽性になってしまう問題があり、現在はQFT検査により感染の診断を行うことが主流です。
QFT検査とは採取した血液から免疫細胞を検査し、T細胞が産出したIFN-γ(インターフェロン-γ)が一定量以上認められると結核感染と診断されます。
※IFN-γは、免疫細胞の一つであるマクロファージが食べた抗原(結核菌)からT細胞が刺激を受けた場合に放出されます。
⇒免疫とは?自然免疫と獲得免疫 免疫細胞の働き 炎症とは何か等について
肺結核の治療
抗結核薬による薬物療法が中心となります。
1つの薬だけを使用すると耐性菌(薬が効かない菌)が増殖してしまうので、多剤併用といって複数の薬を同時に投与します。
患者が薬を飲んだり飲まなかったり不規則に内服すると耐性菌が生まれてしまうので、看護師の監視の元に服用することがWHOにより推奨されています。(これをDOTSといいます)
一旦薬の服用を始めたら、余計な耐性菌を作らないためにも指示通りの服用を守る必要があります。
最初に使用される抗結核薬には「イソニアシド」「リファンピシン」「ストレプトマイシン」「エタンブトール」「ピラジナミド」があります。これらのうち3~4つの薬を併用して服用します。 また薬に耐性が生じた場合、「カナマイシン」「エチオナミド」「サイクロセリン」「パラアミノサリチル」などが用いられます。
周囲への感染を防ぐために2~3ヶ月位入院して治療するのが一般的です。
ちなみに薬を飲まずに自力で治そうとした場合、死亡率は約5割で自然治癒が約3割、残りの2割は完治せず結核菌をばらまいてしまうとのことです。http://www.jata.or.jp/rit/rj/seita3.htm より
抗結核薬の副作用
イソニアシド | 肝障害、末梢神経障害、SLE様症状 |
リファンピシン | 肝障害、発熱、発疹、胃腸障害、腎障害 |
ストレプトマイシン | 内耳神経障害、腎障害、ショック |
エタンブトール | 視神経障害、胃腸障害、知覚障害 |
ピラジナミド | 肝障害、高尿酸血症、関節痛 |
※SLE様症状とは、筋肉・関節痛、皮膚が赤くなったり斑点ができる、発熱、リンパ節の腫れ等です。
肺外結核とは
肺以外で起こる結核です。
高齢者やHIV感染者に多くみられます。
最も多いのはリンパ節(頸部)に生じるリンパ節結核です。
その他に、胸膜に生じる結核性胸膜炎、性器結核、骨・関節結核、結核性髄膜炎、皮膚結核、尿路結核、腸結核などがあります。
粟粒結核とは
粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)とは、結核菌が血液により全身に運ばれ、2つ以上の臓器に結核病巣が認められたものをいいます。
子供や高齢者、免疫不全の患者に多くみられます。
粟粒結核の原因
免疫力が低下した状態で結核菌に感染または再燃することで起こります。
粟粒結核の症状
高熱の持続、頭痛、全身倦怠感などです。
粟粒結核の治療
肺結核の治療と同様に抗結核薬の多剤併用治療が行われます。
参考文献
「病気がみえる vol.4 呼吸器」
医療情報科学研究所 編集
「これだけは知っておきたい呼吸器の病気」
福地 義之助 総監修