性分化異常とは何か、アンドロゲン不応症、ターナー症候群、クラインフェルター症候群の原因、症状、治療について解説します。
目次
性分化異常とは
人の染色体にはXとYがあり、女性の性染色体はXX、男性はXYという組み合わせになっています。
核型(染色体の形、大きさ、数)は女性は46XX、男性は46XYとなります。
性染色体や核型の構造・数に異常があるものを性染色体異常といいます。
社会的な性は、基本的に外性器により決まるため、女性は陰茎がなく、陰核が存在し、男性には陰茎が存在します。
そこから自分は女性である、男性であるという意識が育っていきます。
性分化異常とは、性染色体がXXであるにも関わらず、陰茎が存在するなど性腺や外性器に異常があったり、XYなのに陰茎が無いなどの異常がある、または性染色体異常に伴う性腺の発育不全があるもの、性染色体異常は無いのに遺伝的な性と外見・性器が一致しないものなどをいいます。
アンドロゲン不応症とは
外見や外性器は女性ですが精巣が存在し、テストステロン(男性ホルモンであるアンドロゲンの一種)が正常男性と同程度あるものです。
完全型、不完全型、部分型が存在します。
アンドロゲン不応症の原因
精巣が形成されアンドロゲン(テストステロン)が合成されますが、アンドロゲン受容体異常により作用が発現しません。
アンドロゲン不応症の症状
原発無月経(18歳になっても生理がない)により病院を訪れることが多いです。
染色体は46XYで男性を示します。
陰毛、恥毛はほとんどみられず、膣は短く端盲(塞がっている状態)です。
卵巣や子宮が無く、精巣があります。
鼠径部の腫瘤(精巣)により発見されることもあります。
アンドロゲン不応症の治療
停留精巣はガンなど悪性化することがあるため、精巣を摘出します。
※停留精巣とは本来陰嚢底部に下降すべき精巣が途中の腹腔内や鼠径部などにとどまってしまう状態のことをいいます。
尚、第二次性徴発現時に精巣があるとテストステロンがエストロゲンに代謝され乳房が発育します。そのため成人期まで精巣を摘出しない場合があります。
精巣を摘出後は、エストロゲン補充療法により第二次性徴を誘発します。
ターナー症候群とは
女性の染色体異常で代表的な核型は45XOになります。
第二次性徴が不完全で、低身長などの症状が現れます。
1000~2000人に1人の割合で発症します。
ターナー症候群の原因
染色体の異常が原因で遺伝的なものです。
ターナー症候群の症状
原発無月経(18歳になっても生理がない)や低身長により病院を訪れることが多いです。
他に、翼状頸(よくじょうけい:首の皮膚がたるみ翼のように広がった状態)、盾状胸(たてじょうきょう:幅広い胸)、外反肘(がいはんちゅう:肘から先が外を向く)、小児様外性器(外性器が子供の様であること)などがみられます。
卵巣は索状性腺(さくじょうせいせん:生殖細胞が存在しない)であるため第二次性徴が不完全となり、体型や外性器が子供の様になります。(低身長や乳房の発育不全)
心奇形(大動脈縮窄症など)や耐糖能異常がみられる場合もあります。
卵巣機能がないため妊娠はできませんが、月経は誘発可能です。
ターナー症候群の治療
思春期以前の場合、身長を伸ばすため成長ホルモンが投与されます。
思春期以降の場合、第二次性徴・月経の誘発・骨量維持のため性ホルモン補充療法が行われます。
クラインフェルター症候群とは
男性の染色体異常で代表的な核型は47XXYになります。
男性不妊などの症状が現れます。
1000人に1人の割合で発症します。
クラインフェルター症候群の原因
染色体の異常が原因で遺伝的なものです。
クラインフェルター症候群の症状
男性で不妊により病院を訪れることが多いです。
小睾丸、手足が長い高身長、女性化乳房、ひげの減毛などがみられます。
一般に知能は正常ですが、軽度の精神発達遅滞や学習障害を伴うこともあります。
?クラインフェルター症候群の治療
男性化を促すために男性ホルモン補充療法が行われます。
精巣内に精子が存在する場合、精巣内精子採取術により妊娠を得ることも可能です。
参考文献
「病気がみえる vol.9: 婦人科・乳腺外科」
医療情報科学研究所 (編集)